平方録

真鶴半島と美術館

1人っきりで家にいるのも退屈だし、思い立って真鶴まで車を走らせてきた。
真鶴駅まで50キロ強。海沿いの道をほぼ1時間の距離である。

行って見ようと思い立った理由は中川一誠美術館があること、半島の自然林が見事なこと、どこかでうまい魚料理にありつけそうなこと、の3つである。
もうひとつ加えれば、朝のうちは曇っているが、昼前には晴れて穏やかな天気になるという予報が出ていることである。

相模湾に突き出してはいても、半島と呼ぶにはおこがましいような、ちいさな岬のような半島だが、クス、シイなどの照葉樹やマツの大木が生い茂る原生林が残されていて、それは見事な森を形作っているのである。
この原生林の一角に立つ美術館を訪れるのは2度目で、以前訪れたのがいつだったか、まったく覚えていない。が、2度目なのは間違いない。

ちょうど「中川一誠が描いた秋」というテーマの作品展示が行われていて、都会の真ん中の美術館と違い、月曜日の昼前の小ぢんまりした美術館に来館者は4、5人で、極めて静かに、じっくりと楽しむことが出来た。
画家は箱根の駒ケ岳をよく描き、バラの花や半島の根元にある福浦漁港の佇まいをよく描いている。
同じ対象を何度も何度も繰り返し繰り返し描くというのは、対象の魅力によるものなのか、対象を描き足らなかったためなのか、はたまた別の理由があるのか、知りたいところだ。
どこか、セザンヌの影響を受けているのでは、とも感じさせる。

中国の古典から引き出した言葉を書にしたためたものも多い。
書と言うより、絵と呼ぶべきものなのか。独特の書体、独特の大きさ、独特の散らばり具合、独特の余白などが相まって、書もなかなかの魅力を放っている。
案内文には「一見、自己流に見えるが、八大山人や石濤、金冬心といった明末期から清の時代にかけて活躍した中国の画家や書家、名僧の墨跡を熱心に研究していて、そうした基礎を踏まえたうえでの書です」と記されている。
芸術的センスというのか、独特の筆遣いの作品の数々は、書をたしなんでいる妻も興味をそそられるに違いない。

家を出る前にインターネットで見当をつけておいた魚を供する店へ。
好都合なことに福浦漁港の一番奥まったところにその店はあるという。好んで描いた漁港の雰囲気を味わってみたかったのでちょうど良い。
目の前に相模湾が広がり、その海を見ながら食べられる外のカウンターに座って気持ちが良かった。小春日和なのである。

注文したのは刺し身定食。タイ、肝付きのカワハギを含む地魚4種のはずだったが、表示通りに登場したのはタイだけ。
残り3種はアジにマグロに、カワハギの代わりに何とかハギにすり変わっていて、これでは羊頭狗肉である。
魚にはちったぁ舌が肥えてまっせ、と言いたいが、まぁこんなこともあるさ。
代打の何とかハギはカワハギの足許に及ばず、マグロの赤みに至っては普段口に近づけることすらない。
それで消費税込み2214円なのだから、がっかりした。

圏央道が茅ヶ崎の国道134号まで一直線に延び、東名高速や小田原厚木道路にも直結したためか、店の前には八王子や川越と言った内陸ナンバーが目立つ。
新鮮な魚に縁遠い人たちには珍しく映っても、大磯漁港食堂や平塚漁港の食堂、三浦半島で黄金の松輪のサバを供するエナビレッジの食堂の方が数段上である。

半島先端の三ツ石まで行ってみて、ここを訪れるのも2度目であることを思い出した。学生時代に妻と来たのである。
今から45、6年も前のことである。




福浦漁港

駒ケ岳

薔薇

独特の味わいを持つ書


刺身盛り合わせ



福良漁港の佇まい




名勝・三ツ石。海に降りる階段際にはもうスイセンが咲き始めていた
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