9月の初めにせん定作業を手伝って以来である。
何せ秋晴れの神無月は雨季のようになってしまったし、大きな台風が2個も近づいてきた。
ひょっとすると今年はだめかもしれないと思っていたのだが、ガーデナーのK君が言うように「台風対策はしっかりやりました」の言葉通り、さしたる被害もなく乗り切れたのは何よりである。
肝心のバラは「お見事! しかも見ごろはむしろこれからだね」というくらいに威勢が良い。
例年だと11月に入ると秋バラはぼちぼちお終いで冬支度に入るのだが、今年の天候不順は1か月のタイムラグをもたらしてくれたおかげで、雨と台風の時期をうまくやり過ごした末の繚乱ぶりなのだ。
もともと判で押したようにはいかないのが自然なのだが、動けない植物たちはそれでもドッコイ、時期をずらしたり大きさや花数を調節したりしながら営みを止めないんである。
たくましいことだ。
園路の奥の細い道に分け入って写真を撮っているとかすかに名前を呼ばれたような気がしてキョロキョロすると、また小さな声が聞こえ「こっちで~す、池の方ですよぉ~」と呼び掛けてくる。
相手にはボクの姿が映っているにボクには見えないもどかしさ。
半ばうろたえたようにしているとさっきは女性の声だったのが今度は逆方向からボクを呼ぶ男の声が近づいてくる。
?! ついにお尋ね者になってしまい、細い園路で挟み撃ちか、トゲに囲まれ逃げ道はないゾ! 危うし鞍馬天狗! ってことになったのだ。
天狗のおじさんは、もとい…天狗のオジイサンが細い枝道から出てみると声の主は育児休業中のガーデナーのM子ちゃんで、1歳になったばかりの息子を連れて英才教育にやってきていたのだ。
もう一人の男性は元同僚。
真っ赤なソフィア・ローレンやイングリッド・バーグマンらがケンを競う傍らで「抱っこしてあげてください」と手渡された赤ん坊をあやしながら積もる話にこちらも大輪の花を咲かせたんである。
何と美しい秋の1日でありましょうか…
場所を移してM子ちゃんたちと談笑していると次々に人がやってきて「トリップアドバイザーのエクセレンス認証を受けたんですよ」とか、あたふたとやってきた河合伸之スーパーバイザーは「明日、世界バラ連合の会長さんたち一行が視察に来るんです」と報告していく。
世界バラ連合は3年に一度世界バラ会議を開いていてそこで「優秀庭園賞」というものを出しているそうで、河合スーパーバイザーはぜひ欲しいと意気込んでいる。
「バラが少し遅れてくれたおかげでグッドタイミングになりました」とニコニコしている。
会議は来年コペンハーゲンで開かれるそうだから、河合ならずとも大いに期待したいところだ。
エクセレンス認証というのもその世界では知られた存在らしく、ミシュランが専門家の目によるのに対してこちらは普通の市民の目線による評価なんだそうだ。
素人の市民目線の評価が高いというのも、ここのガーデンがじわじわと知名度を上げて行っていることの表れで、うれしい限りである。
横浜イングリッシュガーデンの秋バラは今月いっぱい見ごろが続きそう
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