3月に入って随分春めいてきていたので、コタツのシミからは卒業したと思っていた。
しかし、昨日はさすがに1日中冷たい雨に降り込められ、リビングの板張りの床の一角に掘ったコタツにもぐりこみ、ローマンシェードのカーテンを少しだけ巻き上げて雪見障子風にして外のデッキに打ち付ける雨を眺めていた。
雨はデッキだけでなく、デッキに置いたプランターの中のパンジーの花にも降りかかり、悪代官のように柔らかな花びらをひれ伏させている。
デッキのその先にはツバキが何本か植わっていて、その満開のツバキの花が時折、音もなく地面に落ちて花びらが飛び散る様子にハッとさせられる。
音がしないのはガラス窓の内側にいるからだが、庭に出ている時だったら、多分「ドサッ」と派手目な音がしたはずである。
ツバキの足元には落花があちこちに広がっていて、それが雨に打たれている姿は、それはそれで趣がある。
そんな具合にしてシミになり切りつつ、句集を手繰っていると小林一茶の句に目が止まった。
春風や鼠がなめる隅田川
随分と大きな表現の句で、さすがに一茶だとほとほと感心するが、思い出したことがある。
庭の片隅に置いた物置の下にすき間があり、そこにネズミの夫婦が住みついたのだった。
7、8年前のことだと思う。
そしてあろうことか真っ昼間にも関わらず、何の遠慮も無くツバキの樹下を含めて、わが庭をチョロチョロ動き回る姿を目撃したのだった。
それは衝撃的な光景で、その姿を見た途端メラメラと怒りの焔が燃え盛ったのだった。
おのれ、この庭をネズ公の天国にさせてたまるかっ!
押っ取り刀でホームセンターへ行き、殺鼠剤を買ってきて、指示書通りに備え付けの皿に殺鼠剤を盛って、ねぐらにしている物置周辺に置いて様子を見守ると、翌朝にはお皿の殺鼠剤が消えていて、周囲に食べこぼしが落ちていた。
ハハァ~ン、ネズ公めっ、食いついたな、いいぞいいぞ♪
念のため、2日目もお皿に毒エサを盛って様子を見ると、これも翌日消えていた。
3日目も同じ。
んっ? まさか、わが家に巣くうネズ公には通用しないのか。ひょっとして、この行為はネズ公を餌付けしてしまっているんじゃあるまいな…そんな馬鹿な…これから鼠算式にネズ公が増えてしまったら…
しかし、4日目のエサはそのまま残っていた。5日目も…
どこかに死がいでも転がってやしないか、発見が遅れて腐臭でもし始めたら目も当てられない、と必死に庭中を探し回ったが、幸いにもどこか別の場所で昇天したのだろうと胸をなでおろしたものだ。
落ちツバキの花に雨が打ちつけている光景を見ていて、フトそんなことがあったのを思い出した。
タネから育ったわが家のパンジー(みんな同じ品種のタネだが、こんなに色の幅がある)