徳島の友人から特産のスダチとこれまた特産のサツマイモ・鳴門金時が届いた。
こういう季節の香りを纏ったその地方特有の産品を送っていただくというのは「あぁ、今年ももうそういう季節になったか…」という感慨とともに、「こちらは元気に過ごしているヨ」という送り主のサインのようにも受け取れ、嬉しいものである。
品物が届いて以降は夕餉の酒を赤ワインから焼酎に代え、ロックグラスにたくさん氷を入れたところに焼酎をなみなみと注ぎ、そこにスダチを2個を絞り入れると少しばかりとがっている焼酎でも信じられないくらいにまろやかになって、しかもほのかに香りが立つものだから、よほど気を付けないと飲み過ぎてしまって後が大変なことになりかねない。
元々上戸の妻だが、飲みながら「あぁ美味しい !」とため息をつくくらいだから新鮮なスダチの実力は推して知るべしというところだろう。
かくして、お国自慢は自慢する方も鼻高々に違いないが、受け取る側もまた手のひらに大事な宝物を戴くような気分にさせられて、ありがたく頂戴するから尚の事、味わいが深くなるという正の連鎖を生むという訳なのだ。
こういうお国自慢を持つ土地に暮らす人がうらやましいと常々思う。
振り返ってみると、わが神奈川県にはお国自慢できるような農産品は頭に浮かばないし、水産品だってこれぞというものは特にない。
他に何かあるだろうかとつらつら考えを巡らせたところで、まったく思いつかない。
思いつくこと言ったら日本が鎖国を解いて横浜に港が開かれたことで外国人の居留地ができ、そこを拠点にたくさんの外国人が往来することで、様々なものが西洋文明としてなだれ込み、初めてビールの醸造が始まったとか、街にガス灯が初めて灯ったとか、下水道が作られたとか、「〇〇事始め」みたいなものは最初の痕跡があちこちに残っているが、どれもお腹には入らないし、舌を楽しませてもくれない。
そして開国に匹敵する駅史的事実に鎌倉が日本で最初の武家政権が樹立された土地だということが挙げられるが、これだって腹の足しにはならないし〝口福〟などとは全く縁がない。
目の前に広がる相模湾は日本でも有数の魚種の多い湾として知られているが、ブリは富山に及ばないし、カツオは高知や鹿児島に道を譲る。
タイだってアジだって伊勢エビだって然り。
一時期マグロは日本でも有数の漁獲量を誇ったが、今はその面影は薄れてしまっている。
スダチと鳴門金時のお礼に鎌倉の武家政権を描いた歴史書とか開国秘話の詰まった本を送るわけにはいかないし、ましてや横浜駅のシュウマイ弁当なんてわけにもいかない…
なんか肩身が狭いんだよなぁ。
あの雲の下は雨です
モクモク
さらにモクモク
稲村ケ崎の国道134号の切り通しにチラッと姿をのぞかせた富士山
たっぷりの氷、なみなみと注いだ焼酎…そしてスダチの汁を絞り入れる