3日ぶりに青空がのぞき、西の方角には富士山こそ姿を隠していたものの丹沢山塊が良く見えたていた。
と、そこまでは大して珍しくもないありきたりの光景なのだが、この丹沢山塊の峰々が朝日に白く光り輝いていたんである。
ん? という思いで目を凝らすと、雲がかかってたまたま光って見えているというわけでもないようである。
雪! なのである。雪が頂上付近に降り積もって、それが白く輝いているのだ。
まるで富山湾越しに見る冠雪した真っ白な立山連峰のごとく、相模湾越しに見る丹沢山塊も白く光り輝いていたんである。
一冬を通したって丹沢が雪化粧することはまれである。
それが彼岸を過ぎてサクラが開花し始める季節になって雪化粧するとは…
平地では冷たい雨が降り続いたが、さすがに一定程度の標高を持った山では雪になっていたんである。
ボクはこうやって「へぇ~」「ほぉ~」と感嘆符付の吐息を漏らしながら間抜け面をさらしていればいいのだが、関東平野の最北の那須のスキー場で雪崩が発生し、登山訓練中だった高校生7人と引率の教師1人が巻き込まれて命を落とす大惨事が起きていたんである。
低気圧の通過がもたらした悪天候で、予定していた茶臼岳登山は中止したものの、スキー場のゲレンデで雪をかき分けて進む「ラッセル訓練」をしていたんだそうである。
気象や防災の専門家はこれまでに降り積もって固まった雪の上に、今回の低気圧でもたらされた新雪がたくさん積もり、それが滑り落ちる表層雪崩の可能性が高いという。
春先に起きやすい現象であるとも付け加えていた。
高校生たちは栃木県内の高校の山岳部員46人で、栃木県の高校体育連盟主催の春山安全登山講習会に参加していたのである。
高体連登山専門部のリーダーの教師まで参加していたというのだから、常識的に考えれば、経験豊富な先生に引率されていたという見方は成り立つ。
そこに降りかかった大惨事である。
上手の手から水が漏れたのか。はたまた…。
いろいろと批判はできるし、様々な指摘もできるのだろう。いずれその辺りは明らかになって行くはずである。
明らかにすることで教訓として今後に生かさなければ、犠牲になった高校生たちは浮かばれまい。
一時、中高年の登山ブームとやらで、体力に疑問符のつく経験の浅い高齢者が遭難事故や騒ぎを起こして世間を騒がせたことを記憶している。
むろん、命に年の差による軽重なんぞがあるとは思わないが、それにしたって春秋に富む高校生がどうしてこんなことで命を落とさなければならないんだろう。
しかも彼らにはまったく落ち度がないんである。
事情は違うけれど、先の戦争で死を強制されて散っていった特攻隊員ゆかりの鹿児島・知覧の特攻平和会館を尋ねたことがある。
隊員たちが死を待つ間に過ごした宿舎や遺影、遺書の数々を前にして、息が詰まりそうになるほどの強烈な思いを味わったが、若者の理不尽とも云うべき死は、どんな場合であっても息苦しく、受け入れ難いものがある。
やがて間もなくすると、雪の解けたゲレンデ近くでもサクラが咲くんだろう。
春の丹沢山塊に出現した白銀の峰々
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