平方録

三が日の認識を新たにする

床に入ると泣き出してしまった姫はケロッとした顔をして起きだしてきた。
昨夜のことが嘘のようにテンションは元に戻って高い。
クリスマスプレゼントに加えて、学年ごとに学校の図書館で一番本を借りて読んだ人に贈られる「多読賞」とクラスの持久走で1番になって表彰されたので、そのご褒美を買うべく、箱根駅伝が通り過ぎるのを待って近場のモールに出かけた。

湘南地域で1番人気のモールではないのだが、昼前だというのにもうかなりの混雑である。
車のディーラーが年末年始休みに入っている中で、モールの中庭で初売りをしていたり、子供向けのぬいぐるみショーが行われたり、金魚すくいやら風船釣りなどの屋台が並んで人だかりができている。
モールのだだっ広い店内はといえば、もう駅の通勤ラッシュ時間帯並みの混雑で、屋上などの駐車場はもちろん、フードコートも空いている場所や席を探すのに苦労するほどである。
まさか正月三が日がこんなにごった返しているのかと、ちょっと想定していなかったシチュエーションであり、その賑わいにぶりに「へぇ~!」「ほぉ~!」と大いに感心させられた。

わが幼少のみぎりは、お年玉がいくら手に入っても店が開くのは正月3が日をはるかに通り越した5日とか7日とか、学校の新学期が始まってしまいそうなところまで待たなくてはならなかったから、たとえほしいものがあったとしても、それはもう1日千秋の思いで、時の過ぎるのを待ち焦がれたものである。
それが今では年末年始の休みもなく営業を続けているので、何だって金さえあればほしいものがほしい時に手に入るのだ。
こらえ性のない人間の「拡大再生産」に大いに貢献していることだろう。
人は便利さと引き換えに大切なものをいろいろと失っているのだが、なかなかそれに気づかないのだ。まぁ、そういう性のもとに生まれついているのだろう。今に限ったことではないかもしれぬ。

姫の狙いは決まっていて、サンタさんからもらった念願のゲーム機で遊ぶためのソフトである。
子どもの目はエサを狙う鷹やトンビのように、実に素早い。
そういう類の商品がずらーっと並んでいるコーナーに近づいた瞬間、さっと走り寄って「これこれ、あった!」とロクに選びもせずに一度に2つも手に取るのである。
2つで5000円を超える。「いっぺんに2つのゲームはできないぞ。今日は1つにしておいたら」というと、駄々をこねることもなく、でも少し残念そうにうなずくので次の機会にもまた買ってあげようという気になってしまうのだ。

親との間では1日30分だけと決めているらしく、今のところ遊び始める前に「30分になったら教えてね」と声をかけてくるので感心である。
まだ2年生だから素直なのだ。

こういうご時世ならではなのだろうが、フードコートには父親と子供だけで食事をしている姿も目立つ。母親は休みも取れずに働いているのだろう。もちろん父親不在という逆のケースもあるだろうが、やっぱりボクの知っている正月風景とは様変わりの光景なのである。
こうした光景を目の当たりにすれば、公園に子供の姿がないのも納得できるし、凧揚げや羽根つきなんてものが絶滅危惧種になるのも理解の内である。



モールで開かれていた「ドラえもんショー」には親子連れが大勢詰めかけた
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