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平方録

地引網の流儀 漁師の定休日

「高い空と青い空。久しぶりに秋らしい一日になるでしょう」
天気予報とは裏腹に、実際の空には薄雲がかかり、外に出ても自分の影さえ映らない。
おまけに北風がそこそこに吹き付けている。
どこが秋らしい一日だ !と悪たれをつきつつ、午後になれば望む青空が広がるかもしれないと、1週間ぶりに自転車を漕ぎに家を出た。
お気に入りの湘南海岸自転車道を走れば、防風防砂の目的で植えられている松林が盾になって北からの冷たい風を防いでくれるはずである。

江ノ島を目の前に見る片瀬西浜に出ると幼稚園児やらその父母たちが波打ち際に集まっている
おなじみの地引網を引きに来たのだろう 今年の秋は地引網が湘南の園児たちに流行っているのか、しばしば目にする

園児たちが嬉々として綱を引き始めた

ここでボクが感心したのは、以前見かけた幼稚園と違って写真を撮る親は網を引く園児たちの外側からカメラを向けている事
従って、2本のロープを引いているそれぞれの子たちが同じ一つの画面に入るから、地引網を引く姿が一目瞭然である
以前見かけた幼稚園は2本のロープの間にも親が入ってしまって写真を撮りまくるものだから、こういう2本のロープをそれぞれが引く全体像を写す写真は撮れなかった
つまり無秩序にわれ先に自分の子どもを撮ろうというバカ親と、それを制御できない幼稚園という図式が如実に表れ、ちょっと首をかしげたくなる光景が展開されていたのだ
加えて、昨日の園児たちはロープを上まで引き終えると、また波打ち際まで駆け足で戻ってもう一度ロープに取りついて引張っていた 
この当然のことが以前の子たちには出来ていなかった イヤっ、させてもらえなかったというべきか 上まで引き終わると今度は親たちのための撮影会に移り、網は漁師たちが引っ張り上げていたから彼我の差は小さくない

子どもの数より親の数の方が多いのは最近の傾向何だろうね
働いている親も子供のイベントに仕事を休んで付き合えるってのは、余裕のある暮らしをしているってことか
裕福と言われる湘南にだって格差は存在するし、広がっていると思うけど…

最後は網元の仕事


網の奥で魚が跳ねる

おこぼれにあずかろうとたくさんのカモメが近づいてきていて大騒ぎしているが…

魚種までは分からなかったけど、かなり大きな魚影が跳ねるのもチラッと見えた 比較的大きなカニも2、3匹混じっていたみたい

茅ケ崎までくると、午前中だというのに港に漁船が整然と係留されたままだ

みんな釣り船で、その数30隻超 
そう言えば港に面した釣り船の店はみんなシャッターが下りていたから茅ケ崎の遊漁船は火曜日定休らしい
しかも漁港の入り口にある鉄の扉が閉じられ、大きな南京錠がかかっていたものなぁ
今時の漁師には定休日があるようだ 晴れれば出漁、時化れば休み、ってんじゃないらしい…サラリーマンじゃあるまいに


相模川河口で自転車道はいったん終わり ここまでわが家から18km
ふだんはここでUターンすることが多いが、久しぶりに右端に写っている湘南大橋を渡って平塚、大磯まで漕いでほぼ10km先の旧吉田茂邸辺りまで行こうと思って左岸堤防を北に向かって走り出した途端、一瞬の強烈な北風がボクのかぶっていたキャップを吹き飛ばした
その瞬間、ボクはすっかり意気を阻喪してしまった 実にあっけないものだった これからやって来るであろうインディアンサマーのような日に漕いだ方がどれほどましか…そう思ったのである 

このころになると、やっと真っ青な空が天空一杯に広がっていった 
ただ、帰路は東に向かって漕ぐのだが、風は北東風に変わっていて、早い話が向かい風 お陰で心肺機能も足の筋肉も普段以上の負荷がかかって、とてもいい塩梅のエクササイズになりましたとさ メデタシメデタシ

地引網を見かけてからほぼ2時間半後 午後1時半ごろもう一度同じ場所を通りかかったら、地引網を引いていた園児らはまだ浜辺で遊んでいて、元気のいい子が海の中に入ってずぶぬれになりながら大はしゃぎしていた
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