平方録

姫の春休み

新幹線の改札口で自動改札機を通して出てきた乗車券と特急券の2枚の切符を大事そうにポシェットにしまった姫の表情はどこか緊張しているようであり、親元を離れる解放感も漂わせて、まぶしく感じられる。
金曜日まで、やりたいことは大概許され、ほしいものもねだれば何とか手にすることができ、何も教科書を広げるばかりが勉強ではないぞ、広く世の中を見なければだめだと考えているじいじと、こちらは少しばかり厳しいが、それでも両親に比べればずっと物分かりの良いばあばの2人に甘え尽くす、夢のような5日間を過ごすのである。

子供は親元を離れることで、一歩また一歩と成長の階段をあがってゆく。
その非日常感と解放感を伴う外的な刺激こそ、成長を促すホルモンでもあり、特効薬でもあるのだ。
4月からは2年生に進級するから、成長速度もさらに増していくはずである。
新幹線の車中と東京駅で乗り換えた東海道線の車中では大概の時間はしゃいでいたが、時々窓の外を走りすぎる景色に見入っていた。一体何が見えていたんだろうか、何を感じていたんだろう。

家に到着しておやつを食べ、じっとしているのが嫌いな姫は「公園でサッカーをやりたい」と言い出した。
最近、体育の授業でサッカーをやっているらしく、母親から「安いボールでいいから用意しておいて」と言われていたので、買ってきておいたのだ。
高校でサッカー部のキャプテンをしていたじいじにとってこれは得意科目である。
どんな具合かと思ったら、元々身のこなしが俊敏なところに持ってきて日頃飛んだり跳ねたりして遊んでいるためか、足腰がしっかりしていて、足元にボールを持った時の身体のバランスがとても良い。
もたもたしたり、足をもつれさせることもなく、しっかり身体の中央でボールを扱えるのである。
これはとても大切なことで、息を切らしてへたり込むような事もなく、スタミナも十分で頼もしいことである。

夕食のときに、サッカーはどのくらい好きなのかと聞いたら、「大好き」と答えたが、サッカー教室に通って選手になろうとまでは思っていないらしい。
運動系では既に水泳とテニスのスクールに通っていて、これ以外にも英語やら何やらの教室に通っているから時間もないのである。
今の小学生は随分と忙しいのだ。
まぁいい。今からただちにナデシコを目指す必要もないのだ。いろいろ挑戦してみるのが良い。でも、素質あり! と見た。

今日はモノレールの車庫と江ノ電の車庫を巡るツアーに参加する。ちょっと名の知れた和食どころの天丼の昼食付きである。
普段は入れないところに潜入できるのだから、楽しみである。



わが家では一番早いモッコウバラの新緑が際立ってきた
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