「一度呼べば聞こえるよ、どしたい大声出しちゃって。そなに熊さんが大慌てするたぁ、ひょっとしてアベなんちゃらが辞めるって言いだしたのかい? 」
「ん? そんな話が出てるのかい八っあん。そりゃぁ目出てぇなぁ。なにかい? 国会でもめてる『乾いたぞうきんを最後の一滴まで絞るための法律』とかいう掟の案が評判悪くて、そうか、ついに降参かい。それで辞めるって言いだしたか。こりゃぁ目出てぇや。よし! すぐに赤飯の準備だ! 赤飯を炊いて長屋の連中に配んなきゃいけねぇな。よし、ちょっくらカカアのところに行って赤飯の準備をするように言ってくらぁ」
「おっと熊さん、慌てんじゃねぇよ。おいらそんなこたぁあ一言も言ってねぇよ」
「ん? アベなんちゃらが辞めるんじゃねぇのかい。なんでぃ、がっかりさせやがって 」
「ほんとにもう! いくら江戸っ子だからって言ったって早合点が過ぎるぜ」
「なんでぇ、おいらぁてっきり辞任かと思ったぜ。往生際の悪りい野郎だ」
「もういいって! ところでどしたんだい八っあんの方は?」
「おう、肝心なこたぁ忘れてたぜ。うふふ…」
「よせやい、気色悪りぃな。だからどうしたってんだよ」
「あのな、聞いたんだよついに」
「ん? いってぇナニを聞ぃたんでぃ。おめぇまさか、最近越してきたあの新婚さんがイチャツイテルところに耳を持ってって聞き耳立ててたんじゃねぇだろうな! 」
「よせやい! おいら出歯がめじゃぁねぇぞ」
「じゃぁナニ聞いたんだよ」
「ハ・ツ・ネ」
「ん? 」
「ウグイスだよ、ウグイスがホ~ホケキョって鳴いたのを今年初めて聞いたんだよ! 正真正銘、初音だよ!」
「おぉ~! そりゃぁよかったなぁ~。で、ナニかい、例の近所の自然公園かい、それとも広町緑地でかい? 」
「おあいにくさま。両方ともブーだね。どこだと思うよ。当ててみなよ」
「知らねぇよ。もったいぶるねぃ、どこだよ」
「なら教えよう。湘南海岸の波打ち際の松林のヤブん中よ」
「エッ、そんなところにウグイスがいるのかい? 海水浴には早すぎるぞ」
「馬鹿だね、ウグイスは海水浴しないの! 実はおいらもな、最初に聞いた時は耳ぃ疑ってな、立ち止まってじっとして耳澄ましてたら確かに「ケキョッ」ってな、あのかん高くて澄み切った鳴き声がな、何度か聞こえたんだよ。間違いねぇ、まだ全部ホ~ホケキョォ~と鳴けないけど、あれはウグイスだ! 」
「ふ~ん、意外な場所だな」
「思い出したよ。そういやぁ毎年、自転車であそこのサイクリングコースを走るたびに聞こえてたんだよ。去年は一度も走らなかったから忘れちゃってたんだな」
「じゃぁナニかい、裏通りのヤブのタクアン先生に止められてた自転車も解禁になって遠乗りしてきたって事かい? 」
「ピンポォ~ン」
「そりゃぁ、どくたぁすとっぷ解除と初音と目出てぇことが重なったなぁ。よかったよかった」
「ありがとよ八っあん。飲ねぇ食いねぇ」
「何にもないじゃねぇか」
「気分だよ、キ・ブ・ン」
「よせやい。じゃぁ赤飯炊いたらどうだ? 」
「うんにゃ。そいつはいけねぇや。赤飯炊くのはアベなんちゃらが野垂れ死ぬまでお預けよ」
「そりゃぁそうだな」
初音を聞いた湘南海岸のサイクリングロード。画面左側の松林に連なるヤブの中から聞こえた
飛砂を防ぐための竹垣の更新作業とサイクリング上に積もった砂の除去直後だったらしい
しかし、今日は春の嵐が吹き荒れるらしいから、どかされた砂は再びサイクリングコースにうず高く積もることだろう
飛砂防止の垣根がないところではちょっとした風でも道路が埋まってしまって自転車は走れなくなるのだ
1年半ぶりに自転車に乗り茅ケ崎漁港まで33.5キロ走ってきた。茅ヶ崎海岸の松林の上、自転車のハンドルの上に薄っすらと白い富士山が見える
コメント一覧
heihoroku
高麗の犬
最新の画像もっと見る
最近の「随筆」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事