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平方録

世話の焼ける奴め

姫の一家と入れ替わるように義弟が日本酒をぶら下げてやってきた。

ボクが長年働いた会社の後輩で重責を担っている身だが、飲み始めて話をしても心ここにあらずという態度で如何にも煮え切らず、話になかなか乗ってこない。
おかしいなぁと訝しみつつ、人事のことに話を向けると図星だったと見えて乗ってきた。
曰く「64歳になるのでそろそろ辞めようかと思う…」。
「ん? 辞めるって、そんなこと許される状況なのか? 」と聞くとあれこれ理屈を並べ、はたまた辞めた後の夢を語り始める。
ふぅ~んと聞いていたが、どうもこちらの反応を探るような目つきをしていて、とても本音を話しているとは思えない。

しばらくウソ話に付き合った挙句、「ところで次は君の番じゃなかったのか ? 状況の変化でもあったのか ? 」と直球を投げてやったらバットを振ってきて、ボクに酒をすすめるは自分では催促しながら次々と杯を干していった。
社の先輩で義兄でもあるボクに背中を押してもらおうという、まったく世話の焼ける話なのだが、まぁ遠回しの報告だったと思えば可愛いもので、単なる結果報告ではなく途中経過を説明する中で理解を求めるという、小癪な真似をしたのだと思う。

そんな小癪なワザをどこで身に付けたのか知らないが、奴もいろいろ考えた挙句の行動だと思えば成長ぶりは認めてやろうと思う。
姫と妹君が帰ってしまった後の寂しさがこれで紛れたわけだが、用意した一升瓶と義弟がぶら下げて来た四合瓶をほとんど空にしてしまったから一人で七合づつ飲んだ計算になる。
最近はここまでは呑まなくなっていたから、珍しいことではある。

幸い今朝は二日酔いもなく、すっきりしているが、29日から飲み続け、しかも運動もしないで食べ続けているので、すっかり体が重くなってしまった。
特に腹回りは見るのもおぞましく、これを放置しておくわけにはいかない。
今日こそは態度を改め、車を締め出した街中を自転車でエクササイズしてこようと思う。ついでに円覚寺を含めて1、2か所で初詣もしてくるつもり。






新江ノ島水族館の相模湾大水槽
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