待ち合わせ場所の駅のコンコースにサングラスをかけた作務衣姿の、ちょっとへっぴり腰気味に歩く「老人」の姿が見えた時、思わず雑踏越しに手を振って「ここだ、ここだ」と合図を送った。
へっぴり腰老人もすぐに気づき、ガニ股の開きをさらに広げるように歩速を速め、「いや~お久しぶり」と言いながら鼻の下にずらしていたマスクをずり上げながら近寄って来た。
しばらく見ないうちに腰の落ちたへっぴり腰歩きになって、すっかり老人っぽくなってしまっている。
わが二合会句会同人10人の内、ただ一人コロナに感染してしまい、10日間の入院を経て退院したものの、肺の機能がなかなか元に戻らず「息苦しくってやってられない」と後遺症をぼやき続けている。
句会の連絡をした際は「無理だよ、息が続かないよ」などと弱音を吐いていたが、犬の散歩を復活させたり、散歩の距離も伸びていることを知り、「気分転換になるそ」「バスで1本じゃないか」と誘った挙句、直前になって「久しぶりにみんなに会いたくなった」と、その気になってくれた。
一緒に感染した奥さんは施設に入所してしまい家には戻ってこれなくなったから、たった一人で炊事洗濯など家事全般をこなさなければいけなくなって、生活が激変してしまった。
口ではあれこれボヤキ、愚痴を漏らしながらだが、救いは生まれながらの明るさ。
何よりジメジメしたところがないから、こうやってゆっくりでも回復の道のりを歩めているのだろうと思う。
後遺症のひとつに「酒が不味い」といって、この日も一滴も口にしなかったのは呑兵衛として不本意なことだろし、仲間としても物足りない。
酒を酌み交わせるようになってこそ「完治」ということになるのだろう。その日が待たれる。
しかし何はともあれ、コロナ感染を乗り越え、突然の独り暮らしを余儀なくされているにもかかわらず復活してくれたことが何よりうれしい♪
わが句会はコロナの余波で2年間活動の休止を余儀なくされ、4月19日に再開句会を開いて以来2度目の開催だが、2年の間に体調を崩してしまった同人は他にもいて、2人が参加できずにいる。
実際にコロナに罹らなくとも、2年間の不自由な生活は心身に暗い影を落としてしまっていることの証左で、特に一定の年齢に達した層には少なからぬ影響が出ている点でコロナ禍の深刻さというものが浮き彫りにもなっていると言える。
出来ることなら時計の針を2年前に戻したいと、切に思う。
以下はわが家のアジサイ
恥ずかしながらわが提出句(兼題は「噴水」)
ひゃっこさや噴水かたち崩れけり
バラ百万本卯の花くたしかな
遠蛙蛇の目光る闇夜の田
近こう寄れビールよ近こう夏日かな
ホトトギスひと声鳴いて夏来たる