平方録

「春一番」に寄せて

予報通りに春一番の強風が吹きまくって、随分と暖かくなった。
対照的に今日の最高気温は昨日の半分ほどの10度くらいだそうだが、別に驚くには当たらない。
早春に寒暖の差が激しいのは毎年のことで、正岡子規のお母さんだって「毎年よ彼岸の入りに寒いのは」と口癖にしていたそうだから、日本人の身体に染み付いた感覚なんである。
もっとも、彼岸まではまだしばらくかかるのだから寒さが戻るのも当たり前。むしろ昨日のような暖かい日がやってくることの方がレアケースなのである。

でも日脚はずいぶん伸びたし、こうして春一番が吹くと、いよいよ春本番は間近だなという感を強くする。
これまで深く沈まされていた寒さという水中から、今は頭と腕の一部が出かかっているくらいの感覚で、間もなく上半身が水面から浮かび上がれそうだし、そうなれば勢いがついて足の先まで抜けるのはあっという間だろう。そんな感じを抱く季節の移ろいなのである。
四季のうちで烈日の夏を最も好むのだが、この烈日に向かっての最初の一歩というべき兆候が示される今頃の時期というものも、絶望の中でほの明かりを見出したような気分にさせてくれるという意味で、次に好きな季節なのである。

昨日は若の2歳の誕生日で、夕食にわが家にやってきて好物のカレーをほおばり、プレゼントをどっさりもらって、多分、特別な日なんだということも何も分かっちゃいないんだろうが、すこぶるご機嫌麗しい様子であった。
遠く離れて暮らす姫とその妹君がボクの携帯電話のテレビ画面を通しておめでとうの大合唱を繰り返し、大いに盛り上がっているのを見て、声を上げて笑ったりするものだから、姫たちの方もすっかり喜んでしまい、延々とエールの交換は続いたのである。
そんな春の宵の光景を、「祖父」という少しばかり威厳の漂う立場のボクは、イメージ通りのキンゲンな態度のまま、ヨシヨシと3人の孫たちのやり取りを静かに見守っていたのである。

さて話は一気に飛ぶ。
国会でもめているあの「共謀罪」ってやつのことだが、どう考えたって、どうしてあんな法律が必要なのか、理解ができない。
むしろ、これまで何度も政府自民党が似たような法案を準備し、その都度大きな批判にさらされて引っ込めてきたものとどこが違うってんだ?
批判にさらされ、つぶされてきた最大の理由は、戦前の治安維持法を思わせる内容だったからだが、国民のあらゆる自由を奪ってきた悪法を復活させようとする狙いは何なのさ。

権力っていうやつはちょっと隙を見せると主権者たる我々国民を縛り付けることに血道を上げることになるということは理解する。絶対王権に対する虐げられる領民などと言う分かりやすい社会構図であるなら、権力側が領民の反乱を防ぐために事前謀議を含めてありとあらゆる手を使うというのは、これまでの歴史が示してきたとおりだが、今の主権在民の日本のどこにそんな図式が当てはまるというんでしょうかねぇ。
それとも、今そんな図式はどこにもないけれど、こういう法律をあらかじめ作っておけば、いざその気になったときに、不平不満を口にする輩を片っ端からしょっ引いて牢屋にぶち込み、静かにさせたところで好き勝手な絶対権力を打ち立てようっていう魂胆なのかしらん。

アベなんちゃらは短い舌を必死に動かして、五輪を開くためにはテロの防止が欠かせないから、こうした法律が必要なんだとも言っているようだが、五輪を開いてくれって頼んだ覚えはないぞ。
五輪やるにしたって、テロ防止は今まで通り既存の法律でやればいいじゃん。
それより東北の被災地復興に金使えよ。熊本はどうなんだ? 福島の原発事故の終息だって見通せないのに、費用ばかり押し付けられる。いつまで、どれだけ払い続けろっていうのさ。
これから南海トラフ、東南海トラフがずれ動いたら大変なことになりそうだという。それこそ首都圏直下地震が起きたらどうするんだよ。
そうなりゃ暴動がおこるぜ。そうか! その無策に対する国民の怒りを、暴動を抑えるために、あらかじめ国民を抑え込む法律を準備しておこうって魂胆か。

国民っていう存在は、縛り付けられる存在でも対象でもないんだけどねぇ。



🎵トンビがくるりと輪を描いたぁ~ ホォィ~のホィ
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