江ノ島を目の端に捉えながら自転車を漕いでいると、黒々として見える島影から何か姿をのぞかせたものがある。
最初はチラッと見えただけだったが、気になって見詰めていると次第に大きくなっていく…
何かが海の上を動いている ?!
姿を現したのは船…それも客船。しかも、かなり大きい。
江ノ島の鼻先や湘南海岸の波打ち際の目の前をこんなに大きな船が通り過ぎていくことは滅多にない。
見かけるのはせいぜい夏休みや行楽シーズンに海上保安庁の2~3000㌧クラスの巡視船が水の事故に備えて数日間停泊するだけだから、余計目立つ。
洋上の距離は比較するものがないから分かりにくいが、ボクの見た片瀬西浜からはせいぜい1、2kmしか離れていないように思えた。
一体何の目的でこんなに岸近くを航行しているのか…
そう思っているとピンとくるものがあった。
昨夜のニュースで横浜港を拠点にする3つの会社のクルーズ船が近く運行を再開する、というのがそれ。
長い間ブランクがあったため、乗組員の再訓練を兼ねた試験航海の準備が始まっていると伝えていた。
なるほど、それで手っ取り早く波の静かな相模湾を航行しているってことか…
それなら合点がいく。
「ダイアモンド・プリンセス」、横浜・大黒ふ頭、緊急搬送…PCR検査なんて言葉はあの時知った。
船というものが如何に密閉された空間で、一旦感染症が蔓延すると手が付けられなくなるということも思い知らされた。
どれもまだ記憶に新しい。
姿を見せた客船は横浜を母港にしている「飛鳥Ⅱ」だと思った。
しかし、よく見ると船腹が白ではなくて黒く見える。そして船全体のシルエット、何より後ろに傾げた煙突の形…
商船三井客船の「にっぽん丸」で間違いないだろう。
煙突がオレンジに近い赤色に塗られていれば完璧だ。
今の「にっぽん丸」(22,472㌧)は3代目だが、2代目が就航した時、処女航海に招かれてグアム・サイパンまでの航海を経験したし、「さくら丸」では大学生の時にハワイ経由で太平洋をロサンゼルスまで行き、帰りはサンフランシスコから乗船してやはりハワイに立ち寄って横浜に戻って来るという、クルーズ船文化など芽生えるずっと以前の当時としては稀有な経験をしている。
そういう意味で「さくら丸」や「にっぽん丸」には特別な親近感を抱いているのである。
思わぬところで昔の彼女にバッタリ会ったようなものか。
懐かしいやら…
島影から姿を現した大型客船 10月22日14:21 片瀬西浜
「にっぽん丸」は11月からクルーズを再開するらしいが、これに先立って25日に愛媛県新居浜港に立ち寄ってJR四国が集めた客を乗せ長崎観光をするという
それで接客のリハーサルを兼ねて相模湾の奥まで入り込み、ぐるりと回りながら伊豆半島伝いに南下して石廊崎を回り、四国に向かうのだろう
ボクは時速20キロ程度で海沿いの自転車道を並走したのだが、徐々に遠ざかって行ってしまったから、案外真剣 ? に走っていたようだ
雨降りの予報だったけどね