彼岸の入りには冷たい雨が降り、中日には開きかけたソメイヨシノに名残の雪が降りかかり、その後もどんよりした空模様が続いていたので、久しぶりの晴れ間に短パンに履き替え(もちろんタイツは履いたけど)飛び出したのに…
「何とかと秋の空」と言うけれど、起きたての佐保姫様だって随分と気まぐれである。
ま、ぼちぼち佐保ちゃんの目もぱっちり開いてくるだろうから、そうすれば温かな陽光に包まれる日が多くなっていくだろう。
江ノ島を目の前に見る境川の河口にあるシラス漁の網元の前を通り抜けようとしたら若い漁師がワカメを包丁で切っていたので自転車を止めて聞いてみた。
「シラスは獲れ出しましたか? 」
「いやぁ、まったくいないみたいなんです。魚探に映らない」
「水温の関係? 低すぎるの? 」
「ええ。それと潮が蛇行しちゃってますから…」
「黒潮の蛇行は前からだし、そう簡単には終わらないでしょ」
「う~ん、そうなんですよね」
「じゃぁ獲れ出すのは大型連休辺り? 」
「そう願いたいけど…。このままじゃぁ困っちゃいますから…」
去年も黒潮の大蛇行があって、結局3月11日に解禁されたシラス漁が活気づいたのは大型連休前後だったように記憶している。
禁漁開けで2か月も獲れないっていうのは、漁師もさることながら口を開けて待っているボクらにも大打撃で、早く生のシラスを肴に冷えた日本酒をクッと飲りたいものである。
春なのに一日千秋の思いで待っているのだ。
シラスの獲れる相模湾は駿河湾、富山湾と並んで日本の3大深湾といわれ、水深が1000mを超える。
湾口が外洋に広く開いていて、しかも黒潮が湾の鼻先を流れていることもあって分流の入り込みもあり、日本でも有数な海洋生物の宝庫なのだという。
調べてみて驚いたが、魚類で約1300種、カニ類約350種、貝類1100種余りも生息しているんだそうな。
これは日本で見られる海洋生物のほぼ4割に当たる数だという。
目の前の海で揚がった魚を扱っていた行きつけの魚屋が先年、幕末からの歴史に終止符を打ってしまって以降はわが家の近所から魚屋らしい魚屋は消えてしまった。
週に1度でも店先を覗いて並んでいる魚を眺め、親仁と話をしていると海の中の様子が手に取るようにわかり、それで先取りを含めて季節を感じてきたのだが、もはやそういうことも出来なくなってしまった。
海の中を覗けないものだから、季節の感じ方だって曖昧になってしまい、表面的な温度の高低ひとつで右往左往させられてしまうのだ。
デパ地下や大型スーパーの魚屋は全国から魚を集めてくる。
結果、その地方のその季節ではお目にかかれない魚さえ並ぶことになるのだ。旬を問わない養殖物の魚なんてクソくらえである。
目の前の海の中を覗きながら暮らしたいものだ。
足元にふと目をやるとヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリの間からいつの間にやらつくしんぼうが
なんでまたこんなところに…。排水溝と砂利道の間のわずかな隙間に超過密状態で
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