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平方録

んっ?!…大トロを鱈腹食えるかなぁ

日本人が大好きなマグロ。

そのマグロの中でも最高級に位置づけられる太平洋のクロマグロの資源量が増えているんだそうな。

それで、これまで資源保護の観点から厳しい漁獲規制が敷かれていたが、国際会議の場で来年はこの漁獲枠を15%増やすことが合意された。

国産の天然物の供給が増えることで値下がりにも期待がかかるという。

秋の食卓に欠かせないサンマの漁獲が2年続けて惨憺たる結果に終わっていることもあって、魚好きには朗報と言ってよい。

 

昨今は世界的な健康志向の高まりもあって、これまであまり見向きもしなかった外国勢が魚に目をつけ始めたことで、争奪戦の様相を呈してきている。

特に魚介類には脳血栓や心筋梗塞などの成人病を予防する働きを持つ高度不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)や、血栓をできにくくしたり悪玉コレステロールを減らす働きと脳細胞を活性化させる働きもするDHA(ドコサヘキサエン酸)がたくさん含まれていることから、これまで主に日本人が独占してきた魚種にも外国勢が目をつけ出しているのが特徴である。

わけてもマグロのツナとしての地位は世界中で確立されていて、ツナ缶はどこの国に行っても食料品店の店先で見かけることができるほど普及している。

競争率が高まるわけで、結果として資源量も漁獲量も減る一方だから値段が上がるのも無理のないことだった。

サンマもまた然り。

日本を訪れる外国人が増えるにしたがってサンマの味を覚えて帰国した人たちが自国で「あの味」を求めるようになり、それらの国々の漁船が日本近海に出没するようになっている。

そして日本の沿岸に接近する前のサンマをごっそり横取りしていくものだから、お手上げなのである。

 

というわけだから今回のマグロの件は多くの日本人に朗報となって伝えられている。

ただボクの場合は少しへそが曲がってついているので、それほど嬉しい訳でもなく「ふ~ん、それは良かったじゃん」くらいの感想しかない。

確かにトロをおいしいと感じる時もあるが、是非食べたいと熱望するようなことはない。

元来安いものではないし、高級すし店のカウンターに座って「トロ」、「次もトロ」なんて言ったこともないし、言える懐具合でもない。

むしろ旬の時期を迎えてたっぷり脂ののったサバやアジ、サンマなどのいわゆる大衆魚の方がよだれを垂らしながら「食べたいっ!」と切望すること常である。

特にアニサキスに注意しさえすれば取れたての新鮮なサバの刺身やごく軽く酢で締めただけの生のようなシメサバのおいしさは大トロなんかよりずっと上品でおいしいと思う。

サンマだって定番の塩焼き以外にも3枚におろしたサンマの背の側をフライパンでサッと炙ったものを氷水で締め、皿に並べたところにみじん切りにした小ネギや大葉、ショウガ、ニンニクなどを身が隠れるほど振りかけ、酒やしょうゆで味を調えたたれをかけまわして食べると、それはもう至福極楽のおいしさで、この世にこんなおいしい食べ物があったかと心の底からにこにこしてくる食べ物なのである。

1人前1尾ではとても足らず、こういう食べ方をすると3~4尾はイケてしまう。

だからサンマは安くなければならないし、旬を迎えれば大量に出回るから当然値段も下がる。だから1尾300円近くもして、しかもやせ細っているようなサンマでは望むべくもないのである。

とにかく「旬を食べる」こと、これに尽きる。

 

かくしてマグロの資源量が増えつつあることを喜びつつ、今回の漁獲枠の拡大で食卓に及ぼす影響を注視し、サンマや他の魚種の動向などにも注意を払っていきたいと思っている。

とにかく新鮮でおいしい魚を手ごろな値段で食べたいという欲求は、頭が考えることではなく、体そのものが求めていることなのである。

 

(見出し写真は近所の寺のムラサキシキブ)

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