「どしたい熊さん ? 浮かない顔してるじゃねぇ~か」
「おぅ、八っあんか…」
「いったいどうしたのさ」
「八っあんは何も感じないかい ?」
「何がよ」
「久しぶりに開かれた臨時国会で首相になって初めて所信表明演説をしたガースの事だよ」
「あぁ、雪深い秋田で生まれてどうたらこうたらってやつな」
「そんな生い立ちなんかじゃなくてさ、なんか腑に落ちないんだよな」
「どういうことだい ?」
「所信表明の中で温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにするって宣言したんだよ」
「おう、聞いたよ。地球温暖化の元凶って言われてるくらいだから、それをゼロにするってのに文句はないだろ」
「そうなんだけどね、なんか唐突感が否めねぇ~んだよ。だって考えてもみなよ八っあん、歴代自民党政権はこの問題には経済界の顔色を忖度するばかりで後ろ向きだったんだぜ。それがいきなりどうなっちまったんだってことよ」
「うん、確かにな。財界妾だったアベなんちゃらなんて、この問題には完全に背を向けちゃってさ、地球温暖化を心配している国々からヒンシュクを浴びても知らん顔でカエルの面に小便だったもんな」
「おうよ !ガースはアベなんちゃらの番頭だった男だぜ。ホントにそう思ってるんだったら番頭時代に何とかできなかったのかよ」
「そうか、熊さんはガースがいきなり『ゼロ』を言い出したわけが腑に落ちないってんだな。そ~いうことなら同感だぜ、確かに唐突だな」
「だからなオイラは疑ってんのよ。眉に唾してんだよ」
「どういうことだい熊さん」
「あのな八っあん、温室効果ガスをゼロにするってのは容易なことじゃ実現できねぇ~んだぜ。経済界だけが努力すりゃァいいってんじゃなくて、国民だって必要があれば生活のスタイルを変えたりしなきゃならねぇ~んだ。窮屈な生活になっちまうかもしんねぇんだ。それくらいの覚悟が社会全体に求められるんだよ」
「う~ん。そりゃぁて~へんだな」
「そこなんだよ、オイラが眉に唾しているわけは」
「勿体ぶるなよ、話してくれよ」
「あのな、オイラは原発をすぐにでも廃止してしまえという意見に賛成する立場なのさ。だけど経済界は物を作るためにも大量に電力を使うだろ。そのコストは安い方がいいってのが経済界が原発廃止に反対する理由さ。アベなんちゃらが腰を引いていたのもそういう財界のダンナたちの顔色を見ながら忖度してたからさ」
「うんうん」
「でな、ここがガースの狡猾なところなのさ。つまり、だれもが心配している地球温暖化を防ぐための温室効果ガスの排出をゼロにするということに反対する国民はいねぇ~はずなのさ。だけど実際は相当難しい。でも原子力発電は温室効果ガスを出さねぇ~んだよ。どうだい、もう分かったろう、オイラの言わんとしたいところが ?」
「なるほどな、ガースの狙いは原発を止めちゃうんでなくて、これから先もず~っと続けるための方便、深謀遠慮ってわけだな」
「ピンポ~ン !」
「だけどさ八っあん、オイラはさ、あくまでも原発は除外した上で『ゼロ』は考えるべきだと思うんだよ。あんな大事故を起こして事故処理に膨大なカネがかかるってのも原発なんだよな。『ゼロ』実現は原発の存続が前提だなんて言わせねぇ~よ。いったん事故が起きたらどんなことになっちまうか…。極端な話、『ゼロ』実現こそ日本から原発を無くしてしまう絶好のチャンスにしなくちゃならないと思うのさ」
「なるほどな、熊さんの浮かない顔の訳が分かったよ。ガースに騙されねぇ~ようにしなくっちゃな」
「ガースの場合はさ、官房長官のころから説明責任を果たそうとしないところがあって顰蹙ものだったんだ。首相になって日本学術会議の新委員の任命拒否問題でも納得のいく説明を拒否してんだろ。そのくせ、自分の言いたいことだけは一方的にしゃべりまくる。今度の『ゼロ』だって真意がどこにあるのか…。これまでに温暖化問題で積極的に発言してきているっていうのなら分からないでもないけど、どうも環境問題での人気取りと原発依存の一挙両得を狙っているようにしか見えね~んだよなぁ」
(見出し写真はわが家のベランダのミニトマト ほかにもたくさん実っている ♪)