雪が降り出す前の午前中のこと。
「摘んできたわ」と言って、山の神が金属製のザルに盛ったフキノトウを見せてくれた。
瑞々しい緑色のフキノトウが八つ九つ…
前の晩、雪が積もりそうだという天気予報を見ていて「フキ味噌を舐めながら雪見酒ができるといいなぁ」と相槌を求めたのだった。
その時は特に色よい返事が返ってきたわけではなかったが、忘れずにいてくれたらしい。
その香るようなフキノトウがフキ味噌に姿を変えたのは夕方で、午後から降り始めた初雪が、庭をうっすらと白く覆い始めたころだった。
掘りごたつに入って本を読んでいたのだが、本をパタッと閉じ、こたつから勢いよく飛び出して冷蔵庫から冷えた日本酒を取り出してきてグラスに注ぐまでの早さを何に喩えたらいいか…
去年はうっかりトウが立つまで放りっぱなしにしてしまい、口に出来なかったから2年ぶりのフキ味噌である♪
フキ味噌のおいしさは何といっても養分が凝縮されたような"土の精"とも言うべき、えぐみを含んだ独特の苦みにある。
口中に含んで一噛みするとジワ~ッと広がる苦みこそ、大地が、大自然が送り届けて来る「早春を包んだ」小包のようなものだ。
味噌や日本酒で和えてあるとはいえ、フキはそのまま摺りつぶしただけだから純粋のナマで、その生々しさが酒や味噌の力を借りて一層奥深い味わいのものとなる。
酒は秋田の「雪の茅舎」の生酒。
フキ味噌に雪景色が加わることは稀なこと。まして初雪と重なるなんて…
かくして、春を迎える様々な行事の一つは滞りなく済んだのでアリマシタ。
よくぞ日本人に生まれけり♪…なのでございます。
竹製のザルに入れ替えてみた庭のフキノトウ
フキ味噌の中に凝縮された大地と春を感じつつ…♪
5日午後4時半ころ
庭のツバキも一輪開いた