春めいた日が続き、サクラをはじめとする春の花が咲き乱れるころになり、着るものもすっかり薄着に替えて実にいい季節になったと喜んでいたりすると、突如サクラの花に雪が積もったりして油断ならないのが春なのである。
夏の庭を飾る花の種を蒔くのは、まさに油断ならない今時分なのだが、ちょうど芽が出始めるような時に気温が零度近くまで下がったりすると、もうてきめんにダメージを受けてしまう。
目覚めたての、極めて抵抗力の弱い状態にあるから、もうその段階で種はそのまま目覚めることはなくなってしまうのだ。
千里鶯啼緑映紅
水村山郭酒旗風
南朝四百八十寺
多少楼台煙雨中
杜牧の「江南春」という七言絶句で、春になると必ず思い出される詩である。
春霞に包まれた長閑な田園風景というものが浮かぶのだが、今年は一度もそうした情景に巡り合っていないのだ。
どうにも煮え切らず、今年の春の足踏みは長いような気がしてならない。
いつまでたっても春爛漫の暖かさというものがやってこない、そういう印象なのである。
お陰で、種蒔きを逡巡したままなのだ。通信販売であれこれ種を買いそろえたのだが、グズグズしていると蒔き時を逸してしまうどころか、肝心な時期までに十分な株に育っていなければ綺麗に咲いてくれないだろう。
困ったことである。
そろそろ強行播種するしかないかなぁ。それにつけても悩ましいことである。
今年の庭の特徴は鉢植えにしていたバラの苗を下ろして庭の中心に据えたことである。
去年2月に初挑戦した接ぎ木によるバラの育苗は大成功で、一挙に5本ものバラの苗木を手にしたんである。
生育度合いは様々だが、素晴らしく元気で照りのある若葉が出揃って、ぐんぐん成長している。
まだ蕾は見えないが、5月の連休頃か、連休明けころには花を開かせるだろう。
新苗は河合伸志スーパーバイザー創出のブラッシングアイスバーグ3本と真紅の花を咲かせるバーガンディーアイスバーグ、そして鎌倉で創出されたという流鏑馬。
空きスペースには春咲きの花を幾種類か植えているが、珍しくチューリップの球根も植え込んでおいたのが、思いがけず綺麗に咲き始めている。
購入したのが12月で、大概の店には売り切れていて見当たらず、唯一、あるホームセンターの片隅に追いやられて、すごく安い値段で売られているのを見つけて買ってきたものである。
したがって残りものだから、個性的なものばかり。八重どころかその倍も三倍もありそうなぼてっとした花の写真がつけられた黄色花とか、緑とオレンジの混じり合った球根とか、どうかな、と首を傾げたくなるものばかりだったのが、いざ咲いて見ると、へぇ~っとびっくりするくらい、良いんである。
思い込みというものが如何に判断力を惑わせるものか、当てにならないものか、改めて突き付けられた気分である。
言うまでもないけれど、想像力が大事なのだ。
世紀の大発見などという科学の世界の偉業というものも、大半は想像力の賜物なんだろう?
仇やおろそかに出来ないってことなのだが、悲しいかな、すぐ経験知に頼ってしまって飛躍できずに来たわが身が情けない。
と、反省することすら馬鹿馬鹿しく、むなしい。トゥーレイトなんだよな。
手遅れにならないうちに種蒔きじゃ。
もっと温度が上がれば、それぞれの株も大きくなって花も見事になるはずである
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