昨日の湘南海岸のサイクリングコース。
片瀬の水族館前を過ぎて辻堂辺りに差し掛かった時、ふと前方を見て驚愕した。
「驚愕」とはオーバーな、と思うかもしれないが、「非常に驚く」の漢語的表現だから、特段オーバーでもなんでもないのである。
自分の目で「あれ」を見てしまえば、だれだって、この言葉に行きつくはずである。
本当にびっくりした。
行く手を黄色の帯が遮っているのである。
煙幕を張ったように地表近くをたなびいている。
その先の景色が霞んでしまっているのだ。
例えて言えば黄砂のようなのだが、黄砂より黄色の度合いが強いように感じられる。
色彩的な分析を試みて見ると、まず空は快晴だから真っ青である。
その下に弧を描いて延びている銀色のサイクリングコースが隔てている左側の相模湾は、青い空を映してこれも濃い青である。
右側は濃い緑色の松林が続いている。後は砂浜の灰色。波頭と雲の白さも目立つ。
つまり青、緑、白、灰色の4色の中に薄い黄色がたなびいているんである。
黄色の正体はマツの花粉である。
この辺りにマツの花粉が飛ぶのは毎年のことだが、今回目にした現象は初めてのものである。
理由は強い北風が吹いていたためだろうと思われる。風がなければ周りに落ちてしまうが、風に乗って吹きつけられるから帯になってたなびくのだ。
そもそも、マツの花粉は自分から「ポンッ」と爆発するように、花粉を飛ばすんである。
数年前、湘南海岸の真ん中にあるゴルフ場でゴルフをしていて、ティーグランドに立って、さぁ打つぞ、という時に目の前のマツの枝先がポンッと音こそ聞こえなかったが、黄色の煙幕を吐いたのである。
これがあちこちで起こるんである。
水の上に落ちた花粉が風で吹き寄せられるのだろう、岸辺は真っ黄色に染まっているし、これを体内に吸いこんでいるのか、と思うとあまりいい気持ではない。
幸いなことにスギの花粉もへっちゃらだし、マツと時期が重なるヒノキの花粉も平気。マツも平気なのだが、過敏な人はスギ花粉などと同じような症状をきたすという。
ただ、スギやヒノキの花粉と比べて、マツは粒子が大きく、それで遠くまで飛んでいかないらしい。ゆえに被害も限定的なんだと思う。
とは言え、目に入ると痛みを感じたりするから近寄らないに越したことはない。
今はほとんどやらなくなったが、この時期の松林の中のゴルフは禁物なのだ。
というわけで、あの黄色の煙幕を目の当たりにしたら誰だってその真っ只中に入りこんでいくのをためらうに決まっている。
しばらくその様子を遠くから眺めていたが、その場で引き返してきてしまった。
春の珍事と言えば珍事なのである。
青い空の下、はるか前方に黄色の煙幕のようなものが見え、だんだん近づいて見ると、まさに黄色の帯が視界を遮ってたなびいている
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