平方録

ノーザンルビー

その名を「ノーザンルビー」という。

直訳すると「北のルビー」。
神秘的な印象を湛えた名前であり、ルビーとつくからには赤系統のものだろうという風に想像はするのだが、一体どんな輝きを持った宝石なのかと興味津々である。
でも、これは宝石ではなくてジャガイモなんである。
北海道原産のジャガイモなんである。

野菜作りに目覚めた山形の友人がたまたま種芋を見つけて植え付けておいたところ、先ごろ収穫できたと言って他のたくさんの野菜と一緒に送ってくれたものである。
友人は茹でてみたら中身の色が落ちてしまったと言っていたので、電子レンジを使ってみた。
普通のジャガイモと同様、ラップに包んだまま電子レンジに放り込んで加熱すると、皮も中身もちょうど柔らかくなって、色も落ちず見た目も鮮やかに仕上がったのは狙い通りである。

驚いたのはその色彩で、皮も中身もピンクがかった赤紫色をしている。
赤系統の食品といえば、トマト、ニンジン、赤ピーマン、パプリカなどを思い浮かべるが、ノーザンルビーは地中で成長するものだからか、これらに比べれば色合いは地味というか、渋めである。 
しかし、和を感じさせるこの色合いはほかの緑色や黄色など様々な食材と組み合わせることでずいぶんと食卓を盛り上げるのではないかと思う。
食感はネットリ系というよりシャキシャキ系のジャガイモに近いようで、しかもやや甘いのかなという気がしたが、それほどジャガイモを食べ慣れているわけでもないので、自信はない。

鎌倉駅前の通称レンバイ、つまり農家が獲れたての野菜を直接売っている市場があり、そこでは西欧料理を中心とした各国料理に使われる馴染みのない野菜が売られていて、レストランでは外の看板に「鎌倉野菜を使ったナニナニ」と書いておけば客がぞろぞろ入ってくると信じている向きも少なくないようだが、あそこならたまには見かけるかもしれないが、とにかく初めて知ったし、初めて口にした。
俵万智風に言えば7月9日は「ノーザンルビー記念日」というところか。

ところで明日11日から「共謀罪」が施行される。
内心の自由が脅かされかねない法律で、どだい憲法違反じゃないかと思えるのだが、違憲立法審査が申し立てられるまでにはしばらく時間がかかるし、よしんば審査が始まったとしても、司法の独立が怪しくなりかけている昨今を見ると違憲判断が示されるかどうかも心もとないが、今のところ寄る辺はそこしかないのも事実である。
「この法律を廃案にする」という公約を掲げて選挙戦に打って出る政党はないものか。
次期衆院選ではぜひそのような公約を見たいものである。

この法律が破棄されるまでは、当局の運用を注意深く監視していかなくてはならないし、注意深く暮らしていくことも心掛ける必要がありそうである。
権力というものはいつか必ず、善良で大人しい国民に牙をむくものなのだ。



友人が送ってくれた野菜の一部が食卓に並んだ。左下から時計回りにノーザンルビー、ジュンサイ、ブロッコリー




円覚寺居士林裏で見つけたヤマユリ。本来自生するような場所でも環境でもないところに咲いているということは、砂岩をくりぬいて根茎を植え付けたものだろう


居士林脇のアジサイ
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