何が変わっているって、大して大きくないものの、東海道線の北側と南側に広がっている駅前繁華街に日本蕎麦屋が一軒もないのだ。
繁華街の広さはたかだか半径100メートル足らずの範囲である。
駐輪場のおじさんに聞いてみたが「…?」
何の腕章か確かめなかったが、腕に腕章を巻いて駅前広場に立っていたおじさんに聞いても、思いつかなかったのか「日本蕎麦はあまり食べないもので…」とすまなそうな顔である。
ある店の前で通行人にランチのチラシを配っていた女性に聞いてみると「…?、そう言えば見かけませんねぇ…。変な町ですねぇ…」
とまぁ、こういう調子なのである。
駅ビルに10軒足らずの飲食店が入っていて、そこにあるにはあったが、信州そばを掲げたお定まりのチェーン店で、個性のかけらもなさそうで、そこに入る気にはなれなかった。
自転車を駐輪場に預け、小1時間ほど北と南をほっつき歩いて探した結果である。
茅ヶ崎の住人はよくよく日本蕎麦を好まないと見える。
不思議な町である。
この街には開高健、城山三郎、高橋治などの作家や加山雄三、桑田圭佑などのミュージシャンが暮らしていたり、今でも暮らしている町なのである。
開高、高橋に至っては食に関する著作も多い。
映画監督の小津安二郎だって茅ヶ崎の旅館を根城に脚本を書いていたし、たまには日本蕎麦を手繰っていたろうに…
土井隆雄、野口聡一両宇宙飛行士もこの街に暮らしたことがあるそうな。
きっとみんな日本蕎麦嫌いだったのかねぇ。んな分けないと思うけど…
日本蕎麦の代わり? に目についたのが「地魚料理」の看板を掲げる店である。
極端な話、4、5軒おきに並んでいる印象を受けるほどである。
駅から離れた住宅街に湘南地方では古くから知られている地魚専門の食堂があって、車で来る人を含めていつも長蛇の列ができるのだが、それにあやかろうとしているのだろうか。
それとも、根っから魚が好きな住民ばかりが暮らしているというのだろうか。
先日、湘南海岸の自転車道路を走っていてお腹が減り、極端に言えばペダルを漕ぐ力がなくなってしまい、そうだ、かつ丼を食べてエネルギー補給をしようと考えたのが発端である。
駅前まで出れば、目指すかつ丼にありつけるだろう。出来れば蕎麦ツユで煮込んだタマネギたっぷりのカツを卵でとじた、あの定番のかつ丼が食いたい! そう思ったのである。
ゆえに、ヨダレを垂らしながら日本蕎麦屋を探したのである。
それが見つからず、余りにがっかりしてエネルギーも尽きかけ、捨て鉢になったのだと思う。パイコー飯という品書きに目がくらみ、同じ豚肉だからと店に入って注文したが、なんだよこれはという、がっかりするシロモノで大いに悔み、町を呪ったのである。
で、昨日の昼、こうなりゃ何としても食いたい! 食ってやる! と妻に話したところ、たちどころにわが家から歩いて行ける範囲の日本蕎麦屋の名前が3軒上がり、そのうちの手打ちの蕎麦そのものが美味しい店へと出向いたんである。
いやぁ~、美味しかったですなぁ~!
イメージどおり。タマネギは良く煮えていて甘く、迷った挙句鶏肉ささみかつを選んだのだが、これがまた豚肉とは違ってはいるものの、さくさくと歯が通り、ご飯に汁も沁み込んで、いやぁもう大満足でございましたよ。
あろうことか、妻の方はセットを頼んだので、かつ丼にもり蕎麦までついて来て、両方を堪能したのである。
ワタクシ? 思いこんだら命がけ。初志貫徹。浮気もしないでかつ丼一直線!
わが町にはちゃんとした蕎麦とかつ丼を出す日本蕎麦屋があるんである。どんなもんだい!
わが家の「ニュー・ドーン」。ようやく花がそろい始めた
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