平方録

フジイ少年が証明するエネルギー不滅の法則

あと5回勝つとタイトル戦の挑戦者になれる。つまり、その段階で連勝記録は34まで伸びることになる。

ここまで来たのだ。すごいとしか言いようがない。
なまじ新記録を打ち立てたからと言って満足しないでもらいたい。
大記録なんぞというものは天の利、地の利、人の利…あらゆる好条件が重なったときに、あれよあれよと一気に花開くものだろう。
そういう意味ではフジイソウタという14歳の少年は、本人の実力もさることながら、竜巻のように周囲のあらゆるものを渦の中に巻き込んで天高く放り上げながら、さらに驀進を続けることだろう。

勝つことがエネルギーになり、そのエネルギーはどんどん蓄積されて行っているかのようである。
勢いというものが違うのだ。
そこが若さというものなのだ。
それが推進力になっているから、相手がだんだん強くなっていったって、そんなものは一向に関係なく、蓄えたエネルギーを小出しに使って行けばいいだけの話である。
勝ちさえすればエネルギーはチャージされていくから、いわばエネルギー不滅の法則みたいなもので、これで誰か論文を書いたらいいのだ。
イグノーベル賞は間違いないところだろう。
それくらいに天地を揺るがす勢いなのだから40連勝50連勝と勝ち進んでもらいたいものである。

前の日が3時間ほどしか寝ていなかったので、昨夜は眠くて眠くて9時過ぎに寝ようとしていたら、携帯電話にニュース速報が届いて29連勝の新記録達成を知ったんである。
慌ててテレビのニュースをつけたら、すでに大騒ぎになっていて、今や世間の一大関心事になっているところが痛快である。

ボクも小学校の低学年の頃から将棋には親しんだが、高校生か大学に通うようになってきっぱり縁を切った。
1対1でやるゲームは数多いが、将棋を指していて自分の王様が身動き取れずににっちもさっちもいかずに討ち死にするところなんぞは、悔しくって悔しくって、大声を出しながら盤面をぐちゃぐちゃに掻きむしりたいくらいになる。
しかし、そんな取り乱したところを、勝ち誇って得意満面な顔をしている相手の前でやるわけにもいかず、悔しさと屈辱感に身震いしながら平然さを装って駒を箱にしまっていくんである。
それが嫌で縁を切ったのだ。

今思えば、仲の良い友達同士が相手だからよけい悔しかったのだ。
あれが、親しくもない人と対戦したのであればもう少し違った感覚でいられるのかもしれない。
しかし、友達同士での敗戦体験というものがトラウマになってボクは1対1の勝負は好まないんである。

フジイソウタ少年の勝ちっぷりは見事だが、その一方で、天下の注目人の相手をさせられる人物の心境はどんなものなんだろうか。
勝てば悪者にされかねないし、ただ相手が浴びる脚光の引き立て役に過ぎない役回りなのだ。
長い棋士人生の中の単なる1敗ですよと、きれいさっぱり割り切れるものなんだろうか。
満座の中でさらされる屈辱というものはないんだろうか。
まぁ、いちいち悔しがって悶絶していたら棋士という仕事は成り立たないだろうけれど…

さて、あと4勝すればタイトル戦の挑戦者を決める決戦になり、ビッグネームと対戦するはずである。
どんなことになるのか、楽しみだね。





庭のルリタマアザミがきれいに色づいた。 ん? 花の上に何かいる…


近づいてみると…網を張らないクモが妙な造形の中でじっとしている
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