その辺りの選択は案外重要で、機械油のにおいが漂ってくるようだったり、下町の乱雑な商店街をほっつき歩きながらだったり、というのもアリには違いないが、そういうのはまた別の設定下の方がより良さそうで、今回は選択肢から外すことにした。
で、向かった先はやっぱり海である。
七里ヶ浜まではほぼ2キロ。江ノ島までだと6キロ弱である。
モロモロを考慮して江ノ島まで歩くことにした。
ところがバス停を通り過ぎようとしてフト見た時刻表が3分後の到来を告げている。
幸運だったのかそれとも…なのかは知らないが、目の前のニンジンを口にしてみる気になった。
3分遅れでやってきた江ノ島行きのバスの人となったのである。
バスは橋を渡って島内まで行くが、橋の手前で降りて人道橋の弁天橋を歩くことにする。
島の南側の岩場まで運航している渡し船が動いているかどうか確かめる目的もあったのだが、何より海の上をテクテク行く方が楽しい。
橋の上でまず広い広い空を確かめるのだ。
場合によっては吸い込まれてしまってもいいのだ。
渡し舟は欠航。理由については何も掲示されていない。
もしかしたら先週の台風21号の大波で岩屋が被害を受けたまま復旧が進んでいないのかもしれない。
加えて台風の余波は続いていてそれなりの波が打ち寄せているから無理なのかもしれない。
良く晴れてはいても北東から吹き付けてくる風が強いのだ。
昼のニュースで「木枯らし1号ですよ。東京では去年より10日も早いです」と言っている。
海に出て木枯帰るところなし 山口誓子
そう、海に出れば行っぱなしなのだ。ボクらだって赤ん坊には戻れない。
午前10時を回ったばかりだが、橋の上は島へ向かう人戻ってくる人でそれなりの人込みである。
抜けるような青い空を味わうなら、やっぱり海なのだ。
そう思っている人たちがぞろぞろ出てきているんである。
中国語が多い。この日は紅毛碧眼も多かった。
中国の人もわれわれ日本人も長ズボンに長袖、場合によってはダウンジャケットまで羽織っているが、青い目の人たちはTシャツに短パン姿が目立つ。
ゲルマンの血を引く人々はもともとが寒い土地の人々だけに、耐寒性においてボクたちとは比べ物にならない遺伝子を受け継いでいると思われる。
ごった返す参道の狭い通りを上っていくボクの目の前に金髪の長い髪を後ろに無造作に束ね、蛍光色の混じったような鮮やかな黄色のTシャツ、黒のホットパンツからほれぼれするようなすらりとした足をにょっきり出した赤いスニーカーの若い女性が1人で歩いている。
ん? ドイツ国旗と同じ色か?
こういう時、ボクは目の前がクラクラしてその足に倒れ込みそうになるのだ。倒れながらその足にしっかりしがみついたら大騒ぎになるだろうね。
話題を変えよう。木枯らしだ。北風ぴぃ~ぷぅ~吹いている♪
木枯らしや目刺にのこる海のいろ 芥川龍之介 この句、好きだね。
凩の一日吹いて居りにけり 岩田涼菟 う~、やだやだ。寒そう。
凩の地にもおとさぬしぐれ哉 向井去来 う~、もっとやだやだ。凍え死ぬぜ。
こがらしや日に日に鴛鴦(おし=オシドリのこと)のうつくしき 井上士朗 安寧のひと時ですか、老夫婦の。
ホットパンツの女性とは帰りのバスで一緒になった。駅の手前の住宅地で降りたからあの付近の住人かもしれない。
江ノ島に渡る弁天橋上から西を見る
むっくりと盛り上がった雲の向こうに富士山が隠れている
白線はのたうち舗装はめくれ上がる
ヨットハーバー脇の出来上がったばかりの駐車場は先週の21号の大波をかぶってごらんのとおり
こちらの民間のヨット置き場はいまだに後片づけが終わっていない
堤防の上は立ち入り禁止
対岸がやけにきれいに見えた
一部で紅葉が始まっている辺津宮を過ぎ
社の脇から渡ってきた弁天橋を振り返ると、内側の片瀬東浜にも波が押し寄せているのが分かる
ついでにオリンピック施設の全体像をパチリ
岩屋のある岩礁地帯は立ち入り禁止。上から眺める
正午少し前、だいぶ雲がどいて富士山があと一息のところまで見えてきた
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