腕時計は結婚する時に妻からプレゼントされたものを45年間使い続けているし、今乗っている車の前の車は2002年から足掛け13年間乗り続けた。
一年を通じて冬のシーズンにしか着ないが、ダウンジャケットもボクのお気に入りの一つで、これは2008年に買って以来、外出する時の定番として必ずと言ってよいほどこれを着て出かけていた。
ロッククライミング用に製造されたモデルということで、ダウンが薄くて腕の自由が奪われないなど、優れた点が多く、第一冬山に出かけるわけでもなく、南関東の街中の冬はこれさえ羽織ればポカポカと十分な暖を提供してくれる優れモノだった。
この製品はしゃれていて、縫い目がどこにもなく、代わりに接着剤で布と布を張り合わせていたのも特徴の一つだった。
ところが、この糊付けした継ぎ目が去年のシーズンが終わった後、つまり9年目のシーズンの終わりにほころびたのだ。
お気に入りのジャケットのトラブルに、購入した店に行って「何とか修理できないか」と尋ねると、何と「無料で修理させていただきます」という答えが返ってきた。
「うん、さすがは環境配慮を標榜するメーカーだわい、やることがなかなかしっかりしていてヨロシイ!」と早速ダウンジャケットを持ち込んだのだった。
修理が済むまで3~4か月かかったが、シーズンオフなので問題はない。
修理が済んで戻ってきたダウンジャケットを見ると全く元通りにきれいにつなぎ合わされていて、これはもう満足である。
ところが……、先月下旬にいつでも使えるように納戸の奥から引っ張り出して一度袖を通してみたところ、修理をした場所以外のところにも新たな「はがれ」部分がある事が分かった。
その後、たまたまこのダウンジャケットを着て出掛けた際に購入した店の前を通ったので、モノは試しと店員に再修理の可能性を尋ねると応対した若い男性店員の口から意外な答えが返ってきて耳を疑ったのだった。
「これ修理したばかりなんだけど、もう一度修理をお願いしたいんです」
「う~ん、今からだと時間がかかってしまいますねぇ」
「ボクは気に入ったものを大切に使って、出来るだけ長く使いたいんだけどなぁ」
「うちの会社の考えもあなたと全く同じです。ちょっと待ってくれますか?」
などと言うやり取りがあって、店員が何やらどこかに電話をかけ、さらにパソコンで在庫の有無やら修理履歴を調べた末にこう言ったのだ。
「お客様、確かにウチで修理を承っていますが、もう修理は限界で不可能ですので同じ品物の新品か、もしくは店内にある同等値段の商品と無料で交換させていただきます」と。
思いがけない答えに「……ん?」とボク。
だってそうでしょう。ボクにとっては愛着のある服だが,9年間着古したものを全くの新品と「無料」で交換してくれるって言うんだから……
結論から言うと、同じ商品はすでになく、同等値段の製品の中にも気に入ったものは見当たらず、もう少し高い商品の中に今まで着ていたものと似た商品があり、差額の2万4千円を支払って「交換」してもらってきた。
定価5万6千円のダウンジャケットである。
登山用品、サーフィン用品、アウトドア用品などを製造販売しているアメリカのメーカーで、カラフルな山脈のマークがそれぞれの製品を特徴づけていて、自然環境に配慮する商品を作っていることでも知られている。
ボクもシーカヤックを始めた30代の半ばころにこのメーカーの存在を知って、他のメーカーより2割ほど値段は高めなのだが、愛用を続けているのだ。
シーカヤックを始めた当初に購入した速乾性素材の短パンのうちの一つは、さすがに色落ちはしているけれどシーズン中でもそれほど頻繁に着用することがないせいか、未だに履き続けているくらい。
それにしてもこのメーカーと店の対応にはほとほと恐れ入った。
そしてつくづく感心したし、感激もした。世の中にはこういう対応の仕方もあるんだ……
ますますこのブランドが好きになった。
看板に偽りなし――とはまさにこういうことを指して言う言葉だろうと思う。
今年の鎌倉の山野は台風24号がもたらした塩害で惨憺たるありさまだ
例年だとそれなりの紅葉で染まる谷戸も単なる枯野の姿をさらすだけ
哀れ、塩が付着して葉を落とされたイチョウは季節外れの新芽を吹いているが…
せめて足元の草紅葉で目を慰める
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heihoroku
MOMO
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