朝から冷たい雨が降っていて、おとなしく本を読んだり音楽を聴いて過ごすしかないかなぁ、久しぶりにコタツの布団のシミにでもなるかと思ったのだが、ふと、その前に黄金の湯にでも浸かってこようかという気になった。
我が家から車で10分ほどの稲村ケ崎の付け根にある黒い湯の沸く天然の温泉である。
美肌効果が顕著だというので女性の間では人気が高い。
正午を少し過ぎたころに到着したら先客は3人で、若者2人ともう1人はボクと同世代らしかった。
若者2人はサウナに入ったり小さな露天風呂に浸ったりしてウロウロしていたがボクと同世代は同じところでじっとしている。
普段は冬でも窓が開いていて外気が入り込み、湯につかりながら富士山や江ノ島の景色を楽しめるのだが、この日は雨が降っていたためか窓ガラスはすべて閉まっていたので浴室全体が湯けむりで霞んでいる。
それで気が付かなかったのだが、同世代は湯船に浸かりながら本を読んでいる…ようだった?!
後で湯の湧き出し口を覆っている乾いた板の上に置いてあった本を見たら、題名までは分からなかったが、そこそこ厚い単行本である。
馬鹿なヤツである。
湯につかりながら集中して本なぞ読めるわけがなかろうに、と思っていたら案の定、ものの2、3分じっとしていたかと思えばすぐに本を閉じてしまったり、浴槽の縁に座ってまた読み出す真似をしたり…
許せなかったのは、あろうことか浴槽の20センチほどの淵に前も隠さずゴロンと仰向けに寝そべって粗末なものを天井に向けてさらしている。
広い河原に湧き出た露天風呂にでも出かけて、湯船から離れた岩の上でならどんな格好をしようが粗末なものをひけらかそうが知ったこっちゃないが、ここは室内の限られたスペースである。
おまけに1人で独占しているわけでもない。
洗面器に水を汲んできて、トドのようにだらしなく膨らんだ皺腹めがけてぶちまけてやりたい衝動にかられたが、そんなことをしたらケンカになるに決まっている。
昔は血の気が多かったが、今となっては後が面倒でとてもそんな気にならないが、無作法で常識のない奴がいたものだ。
おまけに集中なんどできっこないところで本を読むふりなんぞしやがって…
ホントの読書家、愛書家なら浴室に本など持ち込んだりはしないものだ、馬鹿者めが!
数だけ異様に膨らんだボクらの世代は他の世代から嫌われているらしいが、ムベなるかな。他山の石にしなければ。
ところで、そういえば「風呂で読む本」というのがあったなぁ~と急に思い出した。
家に帰って本棚を探して見ると2冊出てきましたナ。
「漂白詩人」と「山頭火」の2冊。何れも「風呂で読む本」という副題が添えられている。
新書版ほどの大きさで、ページ数はいずれも100ページ程度だから軽くて手ごろである。
本の中身は俳句や和歌だからつまみ食いが可能で、おまけに「湯水に耐える合成樹脂使用」と書かれていて、濡れてもへっちゃらにできているのだ。
コタツの中で漂白詩人をめくっていたら井上井月(せいげつ)が出てきた。
岩波文庫の「井月句集」も引っ張り出してきて、久しぶりに読みふけってしまった。いいね井月!
いずれ井月について、もう少し触れてみたい。
初音を求めて昨日は中央公園まで行ってみたが…
ウメにウグイスは来ているのかもしれないが、まだ鳴いてくれないようなのだ
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