平方録

社会的責任というものの著しい軽さよ

7月19日に予定されていた鎌倉の花火大会が中止になってしまった。

来し方、由比ガ浜と材木座海岸で開かれる花火大会は海水浴客も加わって大変な賑わいとなる。
3000発程度が打ち上げられるのだが、何と言っても名物は鎌倉湾を覆いつくすように半円形に広がる水中花火である。
湾の端からスタートした高速艇が湾を横切る間に点火した花火を次々と海面に投下してゆくと、ドカン、ドカンという重量感のある爆発音とともに海の上に扇を広げたような半円形の光彩が躍るのである。
これに上空に打ちあがったスターマインンのにぎやかさが加わると、浜辺はもう昼間のような明るさと威勢の良い軽めの爆発音も加わって、その絢爛豪華さはよその花火大会では見ることのできない、それはそれは見事な花火なのである。

花火大好き人間のボクは仕事のやりくりさえつけば見物に行っていたし、毎日が日曜日になった今はいつでもOKなのに、中止だという。
これまで打ち上げ予定日が悪天候で中止になったことはあったし、東日本大震災の年にも中止になったような記憶があるが、今回の中止理由は、これまでのような不可抗力によるものではなく、人間社会のトラブルに端を発しているらしいんである。

新聞にちょこっと載った程度の情報しかないが、花火大会の実行委員会の牽引車的な役割を務めてきた鎌倉市観光協会のパートスタッフを巡る「雇い止め疑惑」というものがおおもとの理由らしい。
この疑惑が市議会で取り上げられたが、議会が要求した情報を協会側が提出しなかったということで、4600万円に及ぶ市からの人件費の補助金が打ち切られる騒動に発展したんだそうである。

補助金が打ち切られてしまったんでは人が雇えなくなるので日常業務にも差し障るし、まして花火大会の事務局など、とてもできませんというわけで観光協会が花火大会実行委員会から抜けてしまったらしい。
観光協会に代わって旗を振れる組織がないので花火大会は中止なんだそうである。

ちょっと待てよと言いたい。
観光協会も市議会も補助金を出している市も、もとはと言えば存在理由は市民への奉仕なんじゃないのかい。
市民に奉仕する立場を放り投げて、観光地鎌倉のメーンイベントの一つである花火大会を放り投げるとは、いい度胸しているじゃぁないの。
どっち向いて仕事をしているんだ! 3者とも立場をわきまえよ! 市民に目を向けよ! と声を大にして言いたい。

観光協会への補助金だって我々の税金じゃないか。議員報酬しかり、市職員の給与またしかり。
だらしないのは観光協会への指導機関である市の無策ぶりである。
仮に「雇い止め疑惑」が存在するなら、なぜきちんとした指導をして業務の正常化を促せなかったのかという点である。
補助金の使い道を透明にできないようであれば、それはそれで市の責任は決して小さくないんである。

観光協会を担当するのは市民活動部という部署らしく、新聞にはその部長の「苦渋の選択だったがやむを得ない」という談話が載っていた。
他人事のような談話である。市民に対する配慮、気づかいなんてものはみじんも感じられないのだ。
この談話を通して伝わってくるのは納税者である市民に対する責任どころか、もしかしたら疑惑に一枚かんでいるんじゃないのかという点であり、疑いの眼さえ向けたくなるというものである。
市民の要望を汲んで自然を生かした公園を整備したところまでは良かったが、周囲をフェンスで囲ってしまい、門扉に鍵をかけて朝と夕方と年末年始の数日間は市民を締め出してしまう町なのである。そういう「鎌倉名物の市民不在・無視」がここでも頭をもたげたんである。

話が長くなってしまうが、8月に横浜港で開催してきた神奈川新聞花火大会も今年から中止される。
警備に費用が掛かるとか、警察の協力が得にくくなったとか、様々な理由を挙げているようだが、市民の間に定着し、全国からも人を集める花火大会を簡単に中止してしまうという判断に、いささかの疑問を抱くのである。

そもそもこの花火大会は主催する新聞社が社会貢献の一環として今から30年ほど前に始めた、と聞いている。
中止するのが止むを得ないことであったとしても、問題提起をした後に2、3年は開催を継続し、その間に様々な意見を寄せてもらう猶予期間をおけなかったのか。それでもなおいい知恵が浮かばず、中止のやむなきに至るというのであれば、それはそれで致し方ない。一定程度の納得は得られるはずである。
それが社会的な貢献を旗印にして始めたイベントの幕引きの在り方だろうし、中止するにしたって市民に納得してもらえる手立てを講じるべきであったのだ。

鎌倉市も新聞社も、本来求められているはずの「社会的な責任」は「社会貢献」の在り方も含めて他の組織に比べれば格段に重いように思えるのだが、どうもそうした意識が薄弱なんじゃないかと思うのだ。
困ったら即投げ出す、というのでは看板が泣くというものである。





わが家のジューンベリーが満開になった。花が終わると真っ赤な実が付いて鳥たちが集まる。ニンゲンは焼酎に漬けてみたがあまり良い酒にはならなかった。今はジャムにするが、枝が高くなってなかなか収穫出来ず、結果的に小鳥たちを喜ばせている
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「随筆」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事