山形市内に住む友人から自宅とその周辺を撮影した雪景色の動画が送られてきた。
真っ青に晴れ渡った空を背景にこんもりと雪をかぶった真っ白な屋根が眩しい。
庭には腰より少し高いフェンスに届きそうなくらいの雪が積もって波打っている。
家の裏に回れば排雪した雪が背丈に迫る高さで積まれていて壁を作っている。
南関東ではついぞお目にかかることのない雪の量と言っていい。
メールには山形市内の積雪が10年ぶりに80cmを超えて88cmになったこと、24時間の降雪量が30cmにも達したこと、さすがに雪掻きする気になれず自然に融けるのをじっと待とうかな…と綴られていた。
彼にはもう1軒家があって、さらに北へ20km遡った東根市に生家を残している。
立派な蔵のある屋敷で、「農作業を手伝う」という口実を設けて何泊かさせてもらい、田舎暮らしを楽しませてもらったことがあるが、ここの積雪量は山形市内よりはるかに多い。
今冬もしょっちゅう出かけては除雪作業にいそしんでいることを聞いているが、「ナニ、コツがあってね、腰を痛めたりしないでも済む方法があるんだよ」とこともなげに言う。
さらに「雪に慣れてるから」とも言うが、同い年の肉体がそんなに無理が効くわけがない。
ロージンはロージンらしいペースでと思っているから、無理が過ぎなければいいがと心配していたが、「自然融解」を待つ気になったのは良い傾向だと思う。
普段暮らしていない生家の雪掻きは何とかするとしても、2軒分やるのは無理というものだ。
それにしても、ここ数日の日本海側から東北、北海道にかけての降り方はすさまじいものがあった。
北海道の千歳空港が雪に埋まってしまい、鉄道も止まってしまって身動きが取れなくなった利用者が配られた寝袋などにくるまって床に転がっている光景など、口をあんぐり開けて眺めるばかりである。
たった5~6cmの雪で悪戦苦闘する身には、想像もつかない。
気象庁のホームページに日本各地の積雪量を示す表が掲載されている。
24日午前5時現在のそれを北からたどっていくとまず目につくのが「424」という数字。
温泉で名高い青森市酸ヶ湯の積雪量は4mを優に超えて4m24cmも積もっている、といわれても「ふぅ~ん」とは言えてもピンとこない。
4m超はもう1か所あって「415」の新潟県の津南町。豪雪地帯で生まれ育った鈴木牧之が『北越雪譜』で「すごい所がある」と紹介した秋山郷のある町である。
そして3m超が山形・肘折の327cm、同・大井沢308cm、福島・只見町302cm、新潟・魚沼市守門322cm、同・湯沢町312cmの5か所である。
ボクは積雪期の肘折温泉に行ったことがあるが暖冬で1m程度の積雪しかなく、がっかりした覚えがある。
こんなことを平気で口にするのは雪国の苦労を知らないからだが、豪雪地帯の新潟・柏原に生まれた、かの小林一茶は次のような句を残している。
雪とけてくりくりしたる月夜かな
これは、我々が一茶の一方のイメージとして抱いている一茶独特のユーモアがにじみ出た明るく開放的な気分が漂う句で、ようやく迎えた雪解けの季節の到来を浮き浮きした気分で喜ぶ様子がにじみ出てた素晴らしい句だと思う。
一方で…
雪ちるやおどけも言えぬ信濃空
など、雪への憎しみを詠んだ句も多い。
そして再び面目躍如なのが…
雪とけて村一ぱいの子どもかな
最初に掲げた「月」の句同様、ようやく訪れた雪解けの喜びに満ち満ちた明るい句はやはり一茶の真骨頂である。
雪国に春がやってくるまでには、まだもう少し時間がかかるのだろうが、今回の大雪で峠を越したことは間違いないんじゃないか♪
(見出し写真は北鎌倉・浄智寺のウメ)