平方録

庭の後事を託す

先月、すべての役職を離れたので、力を入れてきた横浜イングリッシュガーデンに関しても、立場上は単なる「元関係者」になった。
ガーデンのスタートを任せた業者がさまざまなトラブルを作り出すばかりで、一向に植物は育たず、ついには金銭的な不祥事を起こすに及んで、途中からその再建にかかわることになって、その業者との契約打ち切り交渉を経て、現在の姿になるまでのレールを敷いてきた身としては、いささか寂しい気もするが、いつまでも口を挟むような真似だけはしたくない。
世の中にはそうした老害を振りまいている輩が多いことを身にしみて知っているから、なおさら「わが振り」は正さねばならないのだ。

とにかくここまで育て上げてきた最大の立役者は、何と言っても河合伸之スーパーバイザーである。
彼の植物に関する知識、センス、情熱がこの庭を作り上げてきたわけで、庭づくりを任せた翌年から、まるで魔法を使ったように見事なバラが咲き始め、しかもさまざまな宿根草との組み合わせも目を楽しませてくれているのである。
新聞各社をはじめとするマスコミが一斉に紹介してくれたことも手伝って、あっという間にその存在が知れ渡るようになったのだ。
最近では評判を聞きつけて全国各地からお客さんが来てくれるようになり、挙句は海外の同業者もわざわざ立ち寄ってくれ、河合スーパーバイザーに挨拶して帰っていくそうである。もちろん絶賛付きだそうで、こそばゆいくらいだという。
その意味では、彼は魔法使いだといっても良いだろう。

身を引く人間としては、この河合スーパーバイザーに後のことはくれぐれもよろしくと、頼んでおかねばならない。
そんな気持ちと、これまでの取り組みへの感謝の念も込めて、彼の右腕になってきているガーデナーのK君も呼んで一席設けてきた。
以前2、3度、河合スーパーバイザーを連れてきたことのあるイワシ料理屋で、彼のお気に入りでもあるのだ。
イワシのフルコースを辛口の白ワインで合わせたのだが、喜んでもらえたようである。

3時間弱、今後の庭づくりの方向性などについて意見を交換したのだ。
情熱は衰えておらず、人材の育成も含めて、まだまだやることはたくさんあります、と士気は高い。
来年3月25日から3ヶ月間の予定で山下公園やみなとみらい地区を中心に開催される全国都市緑化よこはまフェアの実行委員会メンバーにも招かれている河合スーパーバイザーはそちらにも燃えており、頼もしくもあり、楽しみでもある。

K君は身近なところでちゃっかりと彼女を作っていて、私は数か月前に口を割らせて本人から聞いていたのだが、河合スーパーバイザーに初めて報告したところ、「急に休みの回数が増えたり、表情や態度から彼女ができたと思っていたよ」と言われ、びっくりしていた。
さすがに日頃、植物を観察している人間だけあって、その観察眼は伊達ではないのだ。驚いた。
肝心の本人は独身のままだが、別に意に介していないようなのがちょっと残念ではあるが…




河合伸之の庭
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