夏大好き人間にとって、大好きな夏を脅かすような「立秋」なんてものは、カタキとしか思えない。
とはいえ「敵を知り己を知れば百戦危うからず」と孫子の兵法は言う。
なんのこっちゃ?…だが、相手をよく観察するのはそもそも無駄なことではない。
「古今集」の「夏歌」の最後は凡河内躬恒の次の歌で締めくくられているという。
夏と秋と行きかう雲のかよひぢは かたへすずしき風やふくらむ
(みな月のつごもりの日よめる、と詞書が添えられている)
「夏の終わりの日に片側の道から夏が過ぎ去るとその反対側からは涼しい秋風が吹き始めてすれ違ってゆくだろうかと空想している歌」と『名句歌ごよみ 秋』の筆者の大岡信は言う。
このように夏と秋がすれ違うそのまんまの現場に遭遇できなくとも、何らかの形で似たようなものに出会えないか…
というわけでボク的には"忍び寄る曲者の秋"の尻尾をつかむか、足跡の一つもこの目で確かめようと探索のパトロールに出る。
わが家周辺ではさすがにまだ秋の虫の鳴き声は聞こえてこない。
しかし、ぼちぼち鳴き始めるころではないか?
たしかそういう秋の虫にちなんだ花が咲く寺があった。
手始めに行ってみるとするか…
長谷の光則寺
鎌倉では花の寺の一つとして聞こえている
しかし、長谷の大仏と長谷観音に挟まれた立地ながら観光客の姿はいつもまばらで、谷戸の奥に立つこの寺の境内はいつも静謐に包まれ、花をめでるにはまことに都合がいい
咲いている花はと言えば…ヤブラン…
キンミズヒキ…
シュウカイドウ…
白花のシュウカイドウ…
ノカンゾウ
ギボウシの仲間?
ミソハギ
花が少ないねぇとシオカラトンボに言うと「本堂の前でスズムシバナが咲き始めましたよ」という
スズムシバナ 秋の虫が鳴きだすころになると咲き出す花なのでひょっとしたら…と思ってやってきたのだが、なるほど本堂前のカイドウの木の下で2輪咲いていた
本堂前とは別のところでも2輪咲いていた 季節が深まるとこの青紫の小花は境内のあちこちで咲きだす
スズムシバナはキツネノマゴ科イセハナビ属だそうだが、スズムシソウというのもあり、こちらはラン科だそう
マツムシソウというのもあるからややこしい
おまけ センリョウの実
ピンポン玉くらいの大きさの柑橘