大海の
磯もとどろに
よする波
われて砕けて
裂けて散るかも
鎌倉幕府第3代将軍・源実朝の歌である。
この歌を始めて目にした時、28歳で暗殺された源実朝は自らの運命を悟っていて、ある日、磯に寄せる大きな波が何度岩に体当たりを繰り返しても小さな飛沫となって跳ね返されるばかりの情景を見て、ふと自らの運命を重ねたんじゃないか…と思ったものだ。
ところが実際は、実朝らしいスケールの大きな歌で、波の力強い躍動感を見事にとらえた印象的な歌だと理解されているようである。
確かに字面だけをみれば、写生の描写としては生々しくて力強く、特に「われて砕けて裂けて」と「て」を3度繰り返して強調しているところなど、快い響きがあって、前途洋々たる青年の力強さが現れているともいえる。
ボクの理解は実朝のその後を知っているがゆえに、それらを重ね合わせた後付けの解釈に過ぎないのかもしれない。
ただ、この歌を詠んだのは27歳の時で、それから1年も経たないうちに鶴岡八幡宮で甥の公卿に殺害されているから、尋常ではない空気感の中で過ごしていたのではないか、そういう気持ちがこうした歌を詠む背景にあったんじゃないかと…
打ち寄せる波が飛沫を上げて飛び散る光景を見ると、いつもこの歌を思い出す。
そして今は切に願う。
ウクライナに打ち付けているロシアの理不尽極まりない凶暴な大波が散り散りに砕け散り、一刻も早く平和が訪れ、その大地に明るいヒマワリが咲き誇らんことを…
稲村ケ崎で