鎌倉秋の寺巡りその6は扇ガ谷の海蔵寺。
臨済宗建長寺派の禅寺でかつては七堂伽藍を要する大寺だったとされるが鎌倉幕府滅亡と同時に焼失し、その後、1394年に室町幕府の命を受けた扇ガ谷上杉氏によって再興されたと、寺の略史にある。
JR鎌倉駅の裏駅(西口)から北鎌倉方面に戻る感じで横須賀線の線路に沿った道を進んだ奥の奥の静かな谷戸に建つ。
裏駅から歩くと途中、鎌倉五山第3位で頼朝の妻の政子の菩提寺である寿福寺や尼寺の英勝寺の前を通って15分くらいだろうか。
花の寺としていつの時期も何らかの花が咲いているが、今は源氏の紋章に使われたリンドウが青い花を咲かせていた。
そして谷戸の奥は朝晩冷えると見えて、他のどこよりもモミジの色づき方がいいように感じられた。ボチボチ見ごろに差し掛かるのではないか。
鎌倉駅から1本道を歩いてくるとゆるい上り坂になり、その先にこの山門が見えてくる
左手の石柱には「海蔵寺」ではなく「海花寺」と彫られているような… 花の寺とも呼ばれているから、それで何の不都合もないけれど
「蔵」を「花」みたいに書くことがあるんだろうね、きっと
山門の右手には鎌倉十井のひとつ「底脱けの井」がある
脇に歌碑が立っている
千代能という武将の娘が参禅中、ここに水を汲みに来たが水桶の底が抜けてしまった そこで「千代能がいただく桶の底抜けて 水たまらねば月も宿らず」と詠ったが、抜けたのは桶の底ではなく、心の底が抜けてわだかまりが解け、悟りが開けたということを意味しているのだと
ボクもまずは水くみから始めなくてはいけないか…
山門をくぐると正面に本堂の「龍護殿」、木立の奥に茅葺の庫裏、そして右手に鐘楼が見える
本殿の左手にあるのが仏殿 薬師堂と呼ばれ本尊の薬師如来が祀られている
この寺は特に拝観料というものは取らないのだが、目印になっている赤い傘の元に十六井戸の拝観料100円を納める小箱と寺の案内書が置いてある
その仏殿の脇の通路の先に「十六井戸」がある
ドンドン奥に進む
崖下に穴がぽっかりと口を開けている
洞窟の中に16の井戸が整然と並ぶ
禅寺になる前は真言宗の寺だったそうで、空海がこの井戸を掘ったとされているがその後埋まってしまい、後の中興の祖が啓示を受けて掘り返し蘇らせたところ霊験あらたかだった…云々
洞窟内にしみ出した水が外に流れてきている
仏殿脇を戻りかけたらこんな2人に遭遇
苔の庭をササラのようなもので掃除していた
落ち葉の季節だから掃除も際限ないことだろう
堂々たる茅葺の庫裏 鎌倉時代の庫裏建築物として歴史的価値のある建物だとか
仏殿と本堂の間の庭一面にリンドウの花が咲いている
本堂と庫裏をつなぐ通路から奥の庭園が見える
庭園は非公開で、本堂の左手を回ってのぞいてみたが、心字池まで備わったこんな石庭があるのにこれまで気付かなかったとは…
しょっちゅう出かける寺ではないとは言えオドロキだ
ネットで調べて見たら、どうやら現住職の手になるもので新しいもののようだ 本堂に遮られて造営中には気が付かなかったらしい ボクにすれば「突如出現した庭」である 「へぇ~ほぉ~」ですな
本堂脇の崖にも井が掘られていて「花の寺」と同様、「水の寺」とも呼ばれる所以になっている
鐘楼周りのモミジが色づき始めた
ここは紅葉の名所でもある 見出し写真の屋根は仏殿