アジ、サバ、イワシ…
誰もが知っている相対的に値段の安い、いわば大衆魚である。
漁獲量が多く、アジが時たま値の張ることもあるが、庶民の味方の魚で、いやしくも魚屋の看板を掲げているところでは最もポピュラーな魚種である。
どれも好んで口にするが、わけてもサバが好物である。
サバの旬は秋で、脂の乗った秋サバのおいしさは食材の王様ではないかとさえ思っている。
まず、魚体や目が光り輝く鮮度抜群のサバが手に入れば刺身で食べるのが一番おいしい。足の速い魚だから、すぐに傷む。この刺身で食べられるサバが手に入るのは海沿いの町に住む人間の特権である。
続いてよだれが垂れるのがシメサバということになる。
このシメサバには一家言持っていて、新鮮なサバを手に入れたら自分でシメサバにするのが何よりおいしい。
当然のことながら秘伝があって、作り方に秘密があるのだ。
すなわち、まず大量の塩でがっちり身を〆ること。そして通常は酢に浸すのだが、それを生のレモンを絞った汁に浸すのである。
肝心なのはいずれの作業も短時間で切り上げることである。
身が白っぽく変色してしまうほど長時間酢に浸したりしたら台無しである。シメサバは酢漬けとは違うのである。慣れない人はこのあたりを勘違いするのである。
短時間で切り上げるから、実態は刺身に限りなく近いのである。
したがって、食べやすいように身を切ると、断面は生の身のように色が鮮やかであり、そこがまた食欲を誘うのである。
妻が2、3年前にアニサキスにやられてしまい、今は口にしないからボクもそれに殉じてしまっているが、残念至極である。
妻は遠慮しなくてもいいわよ、一人で食べなさいよと言うが、一人出てべてもおいしくはないのだ。
で、必然的に熱を通すことになるが、脂の滴る塩焼きも絶品である。
味噌煮だっておいしい。竜田揚げもいける。関西のバッテラも大好物だし、なれずしもおいしい。わけても福井県小浜の「へしこ」は日本酒の友に抜群である。よくもまぁあんな食べ方を発明したものである。ただこのあたりになると塩気がきついので、ボクはそこそこにしている。
というわけで、サバは全国どこに行ってもおいしい食材として身近な存在であり、料理の仕方にも工夫が凝らされているものが多い。実際にほっぺたが落ちるくらいおいしいのである。
しかも、ただおいしいだけではなく、魚体に含まれる不飽和酸脂肪が体に良いことは改めて述べる必要もないくらい、我々への貢献度が高いのである。
青魚は魚の王様なのである。マグロのトロや旬のタイもおいしいに違いないが、値段の安さや、いつでもどこでも大量に手に入り、しかも体に良いという観点からしても、右に出るものはないというべきだろう。
そのサバの資源が脅かされているという。
北海道から三陸沖にかけての水域がサバの主たる漁場の一つだが、この200カイリ排他的経済水域に接する公海上で、中国漁船が「灯光敷網」「虎網」と呼ばれる網で根こそぎ捕獲する漁法や、国連議決で禁止されている「流し網」という漁法まで使ってサバを取りまくっているのだという。
日本や中国など6か国・地域が参加して昨年、北太平洋漁業委員会をつくり、乱獲を防ぐための漁船の届け出制や漁法の制限を決めたそうだが、これが守られていないようなのである。
かつてこの海域では1970年代に300万トンあったサバの資源量が一時15万トンにまで激減し、その後の規制で2014年には147万トンにまで回復してきている矢先の出来事だそうである。
マグロが口にできなくなっても一向に痛痒は感じないが、サバが消えてしまったら一大事である。それだけは勘弁してもらいたい。
わが家の庭に咲いたスイセン。冷えた空気に香りが際立つ
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