JR横須賀線の横須賀駅改札を出るとすぐ目の前にベルニー公園が水際線に沿って細く伸び、その海上にはあまたの軍艦が浮かんでいる光景に出くわす
この画像では2隻のアメリカのイージス艦と3隻の潜水艦が映っているが、潜水艦はいずれも海上自衛隊のものである
公園に顔を向けた2隻の軍艦には手が届きそうだ
同じ場所からちょっと目を左に振ると顔を黒く染めたカモメの水兵の奥に軍艦が浮かぶが、よく見ると旭日旗を掲げているから海上自衛隊の護衛艦である
そう、ここはかつて大日本帝国海軍の横須賀鎮守府が置かれた海軍基地だったが敗戦後米軍に接収され、空母とその打撃群の艦艇を要する米海軍第7艦隊の母港となってアメリカの前方展開戦略の拠点として西太平洋からペルシャ湾にかけての広大な海域ににらみを利かせている。その広い旧軍の基地の北側を海上自衛隊が使用し横須賀地方総監部を置いているため、日米双方の艦船が仲良く同居して浮かぶのである。
ベルニー公園を歩いていくと目と鼻の先に浮かんだ艦ナンバー63の「カウペンス」の左奥に通常見慣れた艦のものとは違う艦橋のような灰色の塊があるのに気付いた。もしや……
「軍港めぐりクルーズ」という旗を出した案内所で聞いてみるとはたして原子力空母の「ドナルド・レーガン」が帰港中だという。米空母は一度作戦行動に出ると半年は戻らないから、ミナトで空母を見ることは極めて珍しいことなのだ。「よし、もっと近くに寄って見てやろう! 」
この船で45分間、日米双方の軍艦が浮かぶ海域を巡航するのだ。昨日は北風が強く、入り江の外に出るともろに北風を浴びて薄着で出かけた身には寒くてこたえた
出航直後に潜水艦の姿が。これは海上自衛隊の潜水艦で陸地には乗組員が勢ぞろいしているから、これから乗り込むところなのか。潜水艦が接岸しているのは米軍基地内であり、海上自衛隊の潜水艦隊司令部は米軍基地内のあるのだ。米軍指揮下? まさか。でもそれに極めて近いかも……。ブリッジの真後ろの高い建物が司令部ビル
そのお隣、公園に顔を向けて澄ましているのがはるばるやってきたイギリス海軍のフリゲート艦「サザーランド」。艦首にユニオンジャックを掲げている。北朝鮮の「瀬取り」を監視するため派遣され、海上自衛隊の艦艇との合同訓練も予定されているらしい
「カウペンス」は排水量9460トンのタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の17番艦で、もちろんイージスシステムを搭載した米海軍の主力艦である
2010年に女性艦長のホリー・グラフ大佐が部下に対する虐待などを理由に解任されているそうだ。私的なクリスマスパーティーで部下にピアノを弾かせたり飼い犬の散歩を命じたり、人前で罵倒したり辱める言葉を投げつけたりを重ねた挙句だったらしい。こういう女性が「土俵に上がるな」などと言われたら、即座にトマホークをぶっ放していたことだろう。相撲協会は命拾いしたぜ!
カウペンスの隣にもイージス艦が2隻。右の65番はカウペンスと同型のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「チョーシン」。左側の85番はアーレイバーク級ミサイル駆逐艦「マッキャンベル」9648トン。マッキャンベルは2011年に空母レーガンとともに東日本大地震救援支援のための「トモダチ作戦」に参加している
おっと! 艦ナンバー76がくっきり見えて来たぞ。間違いない「ドナルド・レーガン」だ!
さらに進むと後ろ向きのイージス艦と54番のイージス艦が並んでいる。54番はマッキャンベルと同型の「カーティス・ウイルバー」。この艦もトモダチ作戦に参加している
結局目につく範囲で空母を護衛する10隻の打撃群艦船の5隻が入港していたことになる。他の5隻はまだ作戦行動中なのだろうか、それとも佐世保基地で休暇か
近づいてきたっ!
う~ん、デカイ ?!
正面から見るとこんな顔
ニミッツ級9番艦。満載排水量101429トン、全長333メートル、航空機最大で90機前後搭載可能、乗組員約6000名、原子力推進、原子炉2基搭載
乗組員の休養のため帰港
ここには日本が第2次大戦で完膚なきまでに打ち負かされた現実が長く存在し続け、今また、日米軍事同盟という必ずしも国民が望んでいない現実が横たわる。万が一アメリカがどこかで戦争を始めればここの自衛隊の艦艇も一緒に軍事行動に参加することになる。よその国に暮らす人々に向かってミサイルをぶっ放すのだ。アニメや漫画の世界ではなくナマ身の世界のことに、うろたえることはないのだろうか。ここに浮かんでいる艦船群は一皮むけば……の存在なのである。
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