咲いたのはたった1輪で、それもアジサイ特有の大きな玉になって咲くのとやや趣を異にして3分の1くらいの玉にしかなっていないが、ちゃんとアジサイの体裁は保っている。
よく見れば花に見えるガク部分が複雑な色変化を見せていて、やっぱりどこから見てもアジサイである。
確か名前が付いていたはずだが、土に刺しておいたネームタグが見当たらないので、残念ながら分からない。
アジサイの花期はボクの暮らす南関東では6月~7月というのが一般的である。
バラがひとしきり盛りを過ぎて花数が減ってきた辺りから、選手交代と言わんばかりにぽつぽつ咲き出して、うっとおしい梅雨の間中、大輪の花を咲かせて楽しませてくれる。
鎌倉には古刹を含めてアジサイの名所として知れられているところも多く、雨に濡れたアジサイを見に訪れる観光客でアジサイと一緒に傘の花も開くというのも特徴の一つと言ってよい。
そんなわけだから写真1枚撮るにも傘の花まで入ることを覚悟しなければならない。
人気の高いアジサイの名所ではアジサイの中に傘の花が咲くのではなく、傘の花のなかにアジサイが咲いているといったほうが、表現としては当たっているだろう。
線路の両脇にアジサイが植えられている江ノ電の線路わきには大勢の観光客が待ち構えていて、トンネルを出た電車がアジサイの花を揺らしながら走り抜けると一斉にシャッター音が鳴り響き、中でも人気の某神社前では、江ノ電の職員やらガードマンが出て拡声器で「線路から離れてくださ~い」と声を枯らすのもこの時期である。
ある古刹では境内の急傾斜の裏山を無許可で削って園路を作ってしまい、その園路の両脇にアジサイを植えたところ2、3年後にはソコソコ立派に育ったアジサイ見物の客で狭い園路に殺到する観光客の入場制限までするようになった。
急傾斜の崖地に手を入れるには県の許可がいるのに、知ってか知らずか「やったもの勝ち」くらいの気持ちなのだろう、ここのご本尊の木造の大きくて立派な観音様も呆れておられることだろう。
この寺は何かと派手好み? で、観光客をひきつけるあの手この手を繰り出している寺でもある。
この〝無法寺〟とは対照的にずっと以前からアジサイの名所として知られてきた切り通しを挟んだ隣の寺では、数年前に山門に続く長い階段の整備をするためすべてのアジサイを引っこ抜いてしまった。
整備が終わればまた植え直すんだろうと思いきや、整備が終了した後には花の咲かない植物が植えられただけで、アジサイの「ア」の字も無い。
静かな境内を取り戻すためだったかと遅まきながら理解したが、思い切ったことをするものだ。
わが家ではアジサイのほかにアケビの花が咲いていて、これは一輪どころか蔓という蔓に満開状態で、萌え出てきたばかりの葉っぱだってびっくりしているんじゃないか。
このアケビも弥生の花ではなくて、植物図鑑によれば花期は4~5月だ。
ボクの記憶ではわが家の庭ではバラと一緒に咲いていたように思うから4月の下旬から5月にかけてというのが例年のことだと思う。
アジサイと言いアケビと言い、やっぱり暖冬異変の成せる業なんだろうか。
それにしたってなぁ~と思うのだが、一部の植物では人間以上に季節の異常を敏感にかぎ取ると見える。
春の珍事……ってことにしておこうか。
そうそう…2階の日当たりの良いベランダで鉢植えにしているお気に入りの「空蝉」に数輪のつぼみが付いている!
比較的早咲きなのだが、この分だと4月の中旬には咲き出しちゃうんじゃないだろうか。
そんなに急いでどこに行く……
エッ、もう咲いちゃったの?
七変化…
この1輪だけだが…
アケビもご覧の通り
「空蝉」のつぼみが膨らんできちゃった
最新の画像もっと見る
最近の「随筆」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事