平方録

アジフライ400円也

29、30日と春の庭の準備のための庭仕事に精を出したが、夜中から降り出した雨はそこそこに強く、朝の10時近くまで降り続いた。その後は青空が広がる気配だったが、地面も木々もたっぷり濡れているので庭仕事には適さず、あきらめて散歩に出た。
長谷寺のわきから権五郎神社の境内を横切って極楽寺の切通しを経て稲村ケ崎に出る。
途中いたるところに水たまりや湿ったところが残っていて、まさに雨上がりの散歩である。日が昇るにつれて気温も高くなって行くのが実感され、浜に出て波打ち際に降り立つと今の時期水温は気温より高いせいか、街中より目立って暖かいのである。風もないからポカポカしているのだ。

あいにく富士山は見えなかったが、このころになると空はすっかり晴れ上がっていて気持ちがいい。
134号の歩道を歩こうかと思っていたが、あまりの気持ちよさに波打ち際を小動岬まで歩くことにする。3キロ弱の距離である。
砂浜を選んだのは、歩道を行くより足に断然強い負荷がかかること。運動のつもりなのである。
砂浜というのは水はけがよいものだろうが、さすがにまだ随所が湿っている。サラサラに乾いているところを歩くのは足を取られるから骨が折れるのだが、濡れていると砂が締っているので比較的歩きやすい。
とはいえ、波打ち際のほうが平だし締まり具合もしっかりしているから、寄せる波の強さを横目で測りながら波をよけつつ歩いていく。
ちょうど中間地点の七里ヶ浜駐車場のところは波に洗われて通れないだろうなと思っていたら、引き潮のせいか、波は届いていないようで、わずかに砂浜が顔をのぞかせている。

片や断崖のような壁、片や打ち寄せる波と状況によっては恐ろしい場所のはずだが、ここは濡れることなく無事にすり抜けに成功した。若かりし頃は満潮でも波さえ低ければ足を濡らさずに岸壁下の砂浜を通れたのだが、それも今は昔の話になってしまった。
治水という名目で川という川にダムや堰をいくつも造るものだから、海への川砂の供給が減り、そのあおりを受けて全国いたるところで砂浜がやせ細っているのである。

この場所を通り抜けるにあたっては念のため靴を脱いで素足になったのだが、小動岬まではあえて足を波にさらしながら歩いて行った。
水は冷たくなく、気持ちがよかった。そもそもはだしで歩くのは気持ちがいいものなのである。

再び134号に出て歩道を歩いて腰越漁港の前を通りかかったら「朝どれ魚フライ」という看板が目に入った。そうか、漁協がとれたての魚をフライにして売っているとは聞いていたが、このことかと回れ右して店内へ。
サバ200円、カマス350円、アジ400円と書かれた品書きを見て、いったいどれだけ大きなフライなのかとびっくり仰天したが、まぁ、モノは試しということもある、アジとサバをひとつづつ注文した。アジが400円とはいささか暴利のような気がするが、どうなんだろう。

店内にはイスとテーブルが備わっていて、ソースやら醤油やらがテーブルに置いてあり、地元のおばちゃんやおっさんたちが食べていた。
殺風景な漁協の店内で食べるよりは、ビールでも買って砂浜で海を見ながら食べようと思ったら、漁協のおばちゃんに「くれぐれもトンビに気を付けてね」と言われた。以前パンを持っていかれたことがあるので、もとより承知だが、実際に砂浜に降りてみると南西の風が強くなってきているうえに、上空にはトンビが群れを成して飛び交っている。
浜辺に座っている人影はなく、あんなだだっ広いところでフライを取り出そうものなら、四方八方から狙われるだろう。
結局バスに乗って家に戻って食べる羽目になった。

味? 注文を聞いてから揚げてくれるので、家に帰って食べても十分に温かかったが、「別に…」ってところですかね。たかがアジフライ、刺身で食べたほうがよっぽどおいしい。
それにしても400円とは…



境内を通過させてもらった権五郎神社(御霊神社)の大イチョウがきれいに色づいている。我が家近くのイチョウ並木が黄葉を前に枝葉を落とされてしまったので、一層イチョウの黄葉が気になるのだ


小動岬の付け根にたどり着き、稲村ケ崎の方を振り返ってみるが、はるかかなたに小さく見えるだけである


腰越漁港のアジフライ(上)とサバフライ。アジの大きさは指先まで含めた手のひらサイズ
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