平方録

黄葉直前の“怪”

奇妙というか、悲しい目に遭遇した。

今、わが海岸沿いの街は周囲の山々を始め、市街地の住宅の庭木も含めて紅葉がきれいな季節を迎えている。
11月24日には、比較的暖かいことで知られる街でまさかの積雪1センチを記録し、北側の屋根などには翌日まで残ってびっくりさせられたものだが、そういうイレギュラーな足並みとはかかわりなく、今年も紅葉の季節はやってきているのである。
ただ、今年の特徴を強いてあげれば、10月までは気温が25度に迫るような日が周期的にめぐってきたかと思ったら、11月に入るとようやく秋らしくなったかと思う間もなく、突如寒さが募ったりして、秋が極端に短かったなぁという印象なのだ。
したがって、紅葉も1~2週間早まったのではないかと思われる。そういう中で事は起こったのである。

わが家近くの市道のイチョウ並木が11月中旬のある晴れた日に、あろうことか1本残らず枝葉を切り落とされてしまったのである。
歩道には100本近くのイチョウが植えられている。
個体によって色づきの速度が違うのだろう、11月の声を聞くと間もなく、1、2本きれいに黄葉したイチョウの存在が目立ち、オヤッ、今年の黄葉はやけにきれいだなぁと感心した矢先だったのだ。
もちろん並木が黄色に塗り替わるのを楽しみにしてのことである。

それが…、である。
11月中旬のある晴れた日の午前中に散歩に出てびっくり仰天させられた。
低い太陽に向かって歩いたので、まぶしかったのは間違いないが、イチョウ並木に出てすぐに異変を感じた。
イチョウ並木のイチョウに、1本残らず葉っぱがついていないのである。枝という枝が切り払われてしまっていたのである。

何ということでしょう ⁉
黄葉はこれからが本番だぜ! その黄葉を目前にしてこれはいったいどういうわけか。

思い当たることがあった。
去年も黄葉が始まる寸前に植木業者が街路樹のせん定を始めたのだ。たまたま通りかかってその有様をスマホで撮り始めたら、現場監督のような中年の男と目が遭い、相手は何か言いたそうだったが、じっとこちらを見つめているだけで、しばらくすると作業をやめて帰ってしまったのである。
15、6本が丸裸にされてしまったが、それ以外のイチョウは無事に残り、きれいに色づいて葉を落とした年明けに改めてせん定作業が行われたのである。

それが今年は一気呵成に、最初の1本が色づくのを待っていたかのように、すべて丸裸にされてしまった。
せん定作業も見ていないのである。

イチョウ並木があるのは市道である。街路樹の管理は市が行っていて、この無情なせん定作業を命じたのはおそらく市だろう。
なに故にこうした無粋な指示を出し、業者に実行させたのか。
かねて、市が管理する自然公園に柵や門扉を備え付け、朝は8時半ころから夕方は5時15分になると門扉を閉ざしてしまうようなことを平気でする街である。年末や正月三が日に至っては終日門が開くことがない。
そんな街が世界遺産登録に向けて気勢を上げているのがちゃんちゃらおかしくなる。
そういうデリカシーのない街だということは知っている。しかし、それにしても…である。

第一、落葉樹を植えておいて紅葉の直前に枝を切り払うという魂胆は如何なるものであるのか。
道路から見える近くの神社の小高い境内にはきれいに黄色に染まったイチョウの大木が見える。
その大木は眼下の仲間たちが受けた仕打ちをどのような思いで見ていたことか。
話を戻すと、なに故にこうした蛮行が行われなければならなかったのか。
常識的には考えられないことだが、何があったのだろう。いずれ問いただす時が来るだろう。

はっきりしていることは、私は今、実際にそういう街の住人として暮らしているという事実である。



追記 7月下旬に突如このブログを休んで早4か月余り。様々なところから「アベなんちゃらが読めなくなって寂しい」とか「ボケ防止はどうした?」とか、再開を迫られた…もとい、期待されたこともあり、これまで午前4時に起きていたものが、止めている間にぬくぬくと惰眠をむさぼってきて、果たして起きられるのか気がかりだったが、何事もなく目覚め、こうして再びボケたことを書き始めることになりました。
この4か月はいったい何だったんだろうという気持ちがないではないが、まぁ、気楽に復帰することにしたのです。



黄葉を目前に丸裸にされてしまった街路樹のイチョウ=11月26日


100本近いイチョウのなかで、気が早い個体なのか11月初めころから1、2本がきれいに黄葉していたのだが…=11月12日
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