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平方録

海辺から森の奥へ

実をいうと、冬は自転車を捨てて鎌倉の至る所に伸びている尾根道をたどるのを楽しみにし、エクササイズ代わりにもしてきた。
ところが、今冬は大枚をはたいて上等なスポーツ用のタイツを購入したので短パンの下にそれを履いて冬の空気を切り裂いてでもペダルを漕ぐようにしてみた。
それはそれでいいのだが、めったに人とすれ違うことも無い冬枯れの見通しの良くなった尾根筋を歩く楽しみというのもまた一方で忘れ難く、しかもボチボチ初音を聞く機会もめぐって来そうだし…と思いつつ、昨日は久しぶりに近くの広町の森に分け入った。

この森に来るのは去年4月のサクラの季節以来
昨秋の台風でだいぶ木々がなぎ倒されたらしいということは風の便りで聞いていたが、いまだにこんなものがぶら下がっていて「通せんぼ」を続けている

黒潮が沖を流れる沿岸地帯の植生に共通する落葉樹と照葉樹の混交林の中に伸びる散策路

こういう尾根道が続く この辺りではヤマザクラの大木が目立つ


そしてこの森のシンボルである樹齢200年超と言われるオオシマザクラ
台風で傷まなかったか、ちょっと心配だったが見たところは何とも変化はないようだ
花の開花のころにはもう一度来ようと思う

笹のトンネルを抜けると前方が明るくなっている


所々で海が見えるが、この場所は少し開けているのでよく見える
この日、自転車を止めて森に分け入ったのは風が強く、漕ぐのに難儀しそうだったからで、案の定、海には羊の群れがたくさん現れていた

尾根筋の道を降りると湿った谷戸の中を木道が伸びている


まだ寒中だというのに、これぞ「水ぬるむ」って感じ
柔らかな光を浴びてさらさらキラキラ流れている

確かに聞こえたんだよなぁ 「ホーホケキョ」って
でもたった1度…それも耳元で鳴かれたのとはちょっと違って、やや遠めから響いてきたような…
しばらくその場に佇んでジッとしながらもう一度鳴かないかと耳を澄ませたんだが、1度きりだった
空耳ってやつかなぁ…
それにしたってこんなおあつらえの場所で、都合よく空耳現象が現れるものなのか ?
まだ1月 暖冬傾向だとしたって初音にはいささか早すぎるってことか

初音を聞きそこなって少々がっかりしながら尾根道に戻ろうとぬかるんだ道を昇りかけたら、どこからか子供の声が聞こえてきた
? まさか、こどもの声まで空耳かい…と苦笑しかけた途端、2、3歳のリュックサックを担いだ男の子と女の子が現れた
靴は泥でぐっちゃぐちゃ、ズボンの裾も泥だらけ…
ぬかるみに渡された細い板の道を譲ってあげて泥の中に立つボクの脇を元気一杯で何やら夢中で会話しながら通り抜けていった
男の子のリュックにくくり付けられたタオルがカッコいい ♪

保護者はいないんだろうか、まさかこんな小さな子が2人きりで森に来るわけがない…
次に現れたのはまた同じ年頃の男の子3人
元気度は最初の2人にはかなわないが、保護者の周りにベタベタしているわけではないから、まぁ独立独歩型とみえる
そうかこいつら保育園か何かの遠足か それにしたって大人はどこに行っちゃったのか、と思ったらやっと1人、女性が現れた
そしてその後からかなり離れて歩いてきた子が写真のこの子
ボクを見て立ち止まって「コンニチハ」と少し心細そうな顔を向ける
ボクもこんにちはと答えて少し進み、振り返ってみてみると、その子も振り返って手を振ってくれてバイバイと言った
彼はあまり汚れていなかったから、多分ぬかるんだところを避けながら歩いてきたんだろうと思う 最初にすれ違った男の子と女の子とは大違いだ 
彼はきっと慎重居士なのだろう それとも汚れるのが嫌いな性格か

最後になって大きなリュックを背負った女性2人が3,4人のこどもの手を引き現れた
結局保護者が3人とこども10人前後の集団だった
この写真の右側の男の子は手に積んだばかりの何かの葉を束ねて持っていた
意図して摘んだものと思われるが、フキにも見えたけど、この時期だから…何だろう
それにしても規模の大きな保育園じゃ真似のできない芸当だね

久しぶりに尾根道に分け入ったら、ウグイスの初音とはまた違った子供たちの思いがけない新鮮な響き声が聞けました ♪
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