八っあん、熊さん「て、て、てぇ~へんだっ!」「てぇ~へんだ、てぇ~へんだ!」
ご隠居さん「おや、八っあんに熊さん、久しぶりじゃありませんか。それにしても、そんなに慌ててどうしたっていうんです?」
八「あっ、ご隠居、お久しぶりでごぜぇ~やす。てぇ~へんなことになりやしたんですよ。北鎌倉の円覚寺の妙香池の水が新年早々から忽然と枯れちまったんでごぜぇやすよ」
熊「池は空っぽでして…見事に干上がっちまってるんででさぁ」
八「仏殿から方丈を過ぎてさらに奥に進む参道の左手のいい場所にある池が干上がっちまって…」
熊「だから否が応でも観光客の目にも枯れた池が入っちまうんでさぁ。違和感ありありですぜ」
八「2度の元寇を追い払った鎌倉幕府第八代執権北条時宗公が両軍の犠牲者の霊を慰めるために円覚寺を建立して以来の大事件なんでごぜぇやしょう、きっと」
熊「そんなわけで山内の和尚様方をはじめ、禅堂で修行中の雲水たちまでがひそひそと『何か良くないことが…』と顔を曇らせているんでさぁ」
八「ご隠居、こりゃぁ一体どうなっちまったんでしょうかねぇ」
ご隠居「円覚寺は三方をまるで屏風を背負ったように取り囲まれ、降った雨も自然と伽藍の地下の水脈をたどって流れていくような地形をしとるからのう…。それが枯れるとは、う~む」
熊「総門の外にある白鷺の池は普段と変わりなく、たっぷり水がありますからねぇ」
八「妙香池にはカワセミが飛んできてエサを狙う姿がありましたから、小魚もいたんでごぜぇやしょうに…。あの小魚たちはどこへ行っちまったんでしょうかねぇ」
熊「それで何とかしなくちゃってわけで、国、県、市の専門家の知恵を借りながら、まずは原因を突き止めようということになったようでごぜぇやすよ」
ご隠居「おお、そうか、そうか、それが一番じゃな。原因が分からなくては対策の打ちようがないからのう。ならば結果待ちじゃな」
八、熊「へぃ、そういうことになりやすですね」
ご隠居「それにな、管長様の横田南嶺老師ならば『あるがまま、泰然としておればよい』『大自然がする事なら、なすがままに任せようではないか』などと涼しい顔をしておるのではあるまいか」
八「へぇ、そんなもんでごぜぇやしょうかねぇ。偉れぇお坊様ってのは大したもんでごぜぇやすねぇ」
ご隠居「うん、だから八っあんも熊さんも、日ごろ何か起きても、決してジタバタジタバタするもんじゃありませんよ。落ち着いて、よく状況を確かめてから行動を起こすってことを肝に銘じておくことですぞ」
八、熊「へへぇ~っ!」
新年早々干上がってしまった妙香池
在りし日の妙香池(HPより拝借)
夢窓疎石の作庭と伝えられ、右奥の露出した大岩は「虎頭岩」呼ばれている
池の脇の立て札
総門を入ってすぐ左手にある十王堂の石仏もどことなく心配そうな表情を浮かべている
十王堂のサクラが満開だった
サクラの種類は不明
お見事♪