平方録

大仏さんの前で

次女一家4人と元日の朝の雑煮を食べて新年を祝った後、腹ごなしに大仏と長谷寺に詣でる。

詣でた先の長谷寺で引いたおみくじが「大吉」だった姫は大喜びで、これは持ち帰って1年間、大切にとっておくのだと満面の笑みを浮かべる。
特に、4月には愛媛への転居が決まっていて、新しい学校に通い始めるのだが、おみくじが「とてもよい。急げ」などと書いているのを見て安心もしたようだ。
無理もない。気心が知れ、仲良くしていた何人かの友達たちと離れ、まったく見ず知らずの同級生の中に放り込まれて、新たな人間関係作りから始めなければならないのだ。
姫にとってはまことに心細い大冒険に、決死の思いで出発するような心境だろう。

ボクも小学校6年生の1学期の途中に転校したことがあって、さして親しい友人も出来ないまま、見ず知らずの仲間と言ってもよいくらいの級友に混じって、馴染みのない小学校を卒業しているのだ。
最後の1年がそんなわけだから、ボクの小学生時代の記憶は中途半端なものと言ってよい。
これは案外寂しいことで、特に学期途中というのは最悪だった。
姫の場合は学年が変わる節目なので、いくらかはましだろうし、溶け込む時間は十分にあるのが救いである。

案ずるより産むが安し――だよ姫。おみくじだって心配ないと言っている。「早く行きなさい」とまで言っているんだから…


元旦の大仏も長谷寺も空いていた。
普段の休日だと双方の名所を結ぶ歩道は人波で埋まり、車道に人がこぼれるほどだが、そんなこともまったく無かった。
特に大仏境内は日本人よりアジア系の外国人の姿が目立ち、大仏が鎮座している台座のすぐ前の石畳では、じかに坐り込んだ人々が手を合わせ、額を石畳にすりつけるようにして祈っている。
賽銭箱の前にも座り込んでいるので、賽銭箱に近づいて小銭を入れるのに一苦労するありさまである。
日本人は鶴岡八幡宮に集中して長い列を作り、拝殿前に着くまでに2、3時間を費やしていることだろう。

日常的には大船駅脇の大船観音にもアジア系の人々が大勢訪れて祈りをささげている。
4月以降はさらにその数を増していくことになるのだろうか。
外国人も日本人も、揃って穏やかな気持ちで大仏や観音様にぬかずくことができるような状況が生まれることを期待しているが、あんなずさん極まりない国会審議を見せつけられると心配のタネは尽きないが、どうなんだろう。

かくして2019年の元旦に限っては穏やかな天候に恵まれ、眼前に平和な光景が展開されるのを寿ぐように、抜けるような青い空を背景に「美男におわす釈迦牟尼」は一層、男前をあげて微笑まれるのであった。



門前は拍子抜けするほど


青い空と空間ばかりが目立つ境内


境内の人の波もたかが知れている


とにかく青空が印象的


釈迦牟尼が見下ろす視線の先には


靴を脱いで行儀よく座り、手をついてぬかずくアジア系の人々


大仏さんの背中


たまには草鞋を履いて近くの海岸を散歩することも 運が良ければ出会えるかもしれない
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