広町緑地と言って周囲を住宅に取り囲まれてはいるが48ヘクタールもの広さがあって、広葉樹と照葉樹の混交林が広がり、幾筋かの深い谷戸の奥にはホタルなどが生息する湿地や里山の風景が広がる心安らぐ場所である。
ここには人知れず咲いてきたヤマザクラや桐の巨木もあって、その満開の姿を見るたびに思わず手を合わせたくなる神々しさは、毎年何を差し置いても見に行きたいと思うくらい素晴らしい。
良く晴れた昨日、ボクがこの緑地に分け入ったのはまだチト早いが、今年は暖冬気味なので初音が早いのではないかとにらみ、ヤブの奥に潜むウグイスご挨拶に伺ったというところなのだ。
もちろんまだ初音は聞けなかったが、海のすぐそばから始まる緑地は他と比べて暖かいので案外早いかもしれない。
そんな思いで尾根筋の道をたどっていくと、葉をすっかり落とした裸木が続く南に開いた斜面に真っ赤な葉が真っ青な青空に映えている光景が目に飛び込んできた。
紅葉? そんな… ぼちぼち大寒だぜ……と思いつつ近づいてみると、モミジの仲間に間違いない。
人の手のように5本の〝指〟が広がるおなじみの葉が真っ赤に色づいて、それが枝に大量にくっついているのだ!
それも1本ではなく、隣り合う数本も。
下界? ではもうとっくに散ってしまっているのに…
南に開けた斜面は北風を遮り、去年の内はまだポカポカしていて紅葉どころではなかったのかもしれない。
年が明け、ようやく日の出前などに気温が零度くらいまで下がるようになって遅ればせながら色づいたというところだろうか。
思わぬ寒中の紅葉狩りをさせてもらった。
尾根筋の道をたどるのは谷戸の奥の湿ったような道を行くのとは違って所々で眺望も開け、しかも明るくて好きである。
鼻歌交じりに進んでいくと笹が密集する場所に差し掛かり、多分笹薮の裏から聞こえてくるのだろう、比較的可愛らしい女性の声で「ねぇ、一生のお願い! 」というただならぬ言葉を耳にした。
「?」と思いつつ、道に沿って進むと笹薮が開け、草むらが広がる広場のようなところに出た。
そこには近くの保育園の子たちが遊びに来ていて、声の主もその中の女の子であるらしいことが分かった。
その正体を見極めて、声の主が成人女性だったらどんな顔をして通り過ぎようかなどと考えていたボクはホッとすると同時に、一気におかしさがこみあげてきた。
だってそうでしょう?
「一生のお願い! 」って、口にする方も言われた方も、一体何年生きて来たって言うのさ。
たかだか3年から5年のはずである。
そんな幼子が一生をかけてまでお願いするものって、一体…… ⁈
ウグイスだって初音の練習をしながら下のくちばしが外れるほどビックリしたんじゃないのかしらん。
寒中の真っ青な青空に映える真っ赤なモミジ=鎌倉・広町緑地で
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