平方録

負うた子に教えられ…

何と、姫の漢字の練習に付き合っていて、わが身の間違いに気付かされるという珍事があった。

冬休みの間わが家に遊びに来ていた小1の姫は、習った漢字を毎日5つずつ復習することと、本を読むことを義務付けられていたんである。
身体を動かして飛び回る方が好きな姫にとっては、じっと座っていること自体苦痛のようで、ましてお勉強など真っぴらという態度なのである。
それでも30分余りだが、誕生日にじいじがプレゼントしたまどみちお詩集を持参してきたので、一緒に読み、漢字の勉強ではノートに一文字10字づつ丁寧に書きこんでいった。

勉強が嫌いだから、書くのはぞんざいかと思ったら、これが几帳面にきれいな文字を重ねていくので、意外であった。
鉛筆の持ち方も正しい。
私はと言えば、仕事柄丁寧に書くというより、如何に早く書くかが問われる職業に就いていたものだから、書く字は汚く自己流に崩れていて読みづらい。
見ていた姫は「あ~、なにそれ!」と軽蔑の視線を投げてよこすのである。

そして、その日に取り組んだ足、手、花などに交じって「耳」になった時、「あれ、書き順が違う」と思ったんである。
で、姫に「その書き順でいいの?」と聞いてしまったのだ。
すると怪訝な顔をして「先生に習ったんだもん。これでいいんだよ。じいじも書いてごらん」と言われ、半信半疑で携帯電話から漢字の書き順のサイトを開いて確認してみたところ、なるほど、姫のいう通りなのだ。

耳の正しい書き順は、横棒、左の柱、横棒、横棒、左下から右上へのハネ上げ、右側の柱、の順である。
しかるに私は横棒、左の柱、そして右の柱を書いた後、左右の柱をつなぐように上から順に3本を書き添えていたんである。
画面を見ていた姫もサイトが示す書き順に「ほら、そうでしょう」と得意気である。
何と60年間に渡って耳の書き順を間違って覚えていたんである。
まさに「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」の例えの通りのことが起こってしまった。

姫には「30個書きなさい」と厳命され、正しい書き順で30字を丁寧に書いたつもりである。
すると姫は赤鉛筆を手にして、わが文字を点検し、端からばってんをつけてゆく。
「どうして?」と尋ねると、「ここが曲がっちゃってるでしょう」「ここはきちんとくっつけるの」「ちゃんと払ってないじゃん」とごもっともな指摘である。
あまつさえ、間違ったところに先生がやるように、赤鉛筆で正しい線を引き直すんである。
さらに用紙の端に「はらう」「くっつける」「ていねいにかく」と朱書きまでされてしまった。

「もう30回書きなさい!」
「はい」

かくして、注意して丁寧に書いたので、ようやく「合格の丸」をもらえたんである。



鎌倉山から見る江ノ島。午後3時40分だが、陽は傾き、辺りは黄金色に染まりかけている。富士山は見えない。
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