本来は撮影が主なんだろうが、幼児のもしもの安全を考えて買い物かごにカメラを忍ばせたオバサンや、大きな工具箱にカメラを隠した水道工事屋さんが近くをウロウロしているのが特徴で、道を間違えそうになると急に近づいてきてそれとなく行く手をを妨害したり、進路を変えさせたりするのである。
不肖、ボクも暮れも押し迫った昨日、正月用のかまぼことワサビ漬け、練り梅、ういろうの買い出しを妻に命ぜられ、はるばる電車に乗って小田原まで出かけたんである。
暮れの買い出しなんて、来し方現役時代は仕事柄家にいることは稀で、大晦日だって除夜の鐘が鳴ってからでないと家路に付けなかったので、やったためしがない。
その意味で〝初めてのお使い〟と言うことに相成ったのだ。
買い物かごを下げたオバサンも大きな道具箱を持った水道屋さんもそばにはいなかったが、なぜか浮き浮きと電車に乗ったんである。
天気も晴朗である。
以下はその絵日記。
小田原駅に降りるといきなり小田原城が目に入る。
遠くに山並みを従えてすっくと立つ天守閣ってのもいいもんですなぁ。
餌付けする人がいて、カモメが飛び交っていた。そう、海は近いのだ。
北条5代の本拠としてその名をとどろかせた難攻不落の名城で、城下町をも取り囲んだ延長9キロにも及ぶ惣構が特徴。
お濠を隔てた三の丸小学校の裏手に当たるところ、国道1号に面したところにこんな〝お城〟が。実はここが「ういろう」の本店。足利幕府の時代に中国から亡命して博多にやってきた陳宗敬の子孫たちが「外郎薬」と菓子の「ういろう」をもたらし、小田原以外にも名古屋や伊勢にも拠点を構えて今に続いている。ボクなんかは「外郎」「ういろう」と聞けばここを思い浮かべるのだ。
かまぼこの「かごせい本店」。籠清と書くがひらがなの方が柔らかい印象である。ういろう屋からここまでは300メートルくらい。途中に防腐剤などの添加物を入れていないワサビ漬けを量り売りしている店があり、そこのワサビ漬けを好んでいるのだ。トーストに塗ってもおいしいのだ。塗り過ぎると大変なことになるけど…。かまぼこも小田原名物で、名店と称するものはたくさんあって小田原出身の知人たちに聞くとそれぞれ違った店の名を挙げるくらい、人それぞれの好みは違うのだ。今回は何となくここにしてみた。なにせ初めてのお使いなのだ
国道1号を箱根に向けて走ると道がクランク状に左に折れすぐに右に折れるところがある。その右に折れる所の道端に大きな柳の木があり、古い商家を改造した案内所兼お休みどころがあって〝気が付きにくいランドマーク〟になっている。間もなくここをたすきをかけた大学生たちが駆け抜けてゆくのだ。
そのランドマークと道を挟んだところにこんな佇まいの店があった。かごせいの裏手というか表と言うか…。幟旗のわきの看板に「鯵醤油ラーメン」と書かれている。曰く「濃厚な豚と鶏のコクの中に鯵と醤油の風味が広がる唯一無二のスープ」とあり、「孤高のラーメン」とまで言っている。時刻は午後2時15分ほど前。途中に趣のありそうな蕎麦屋などもありそこで気付け薬でも飲みながら…とも思ったのだが、孤高とあらばちょっと慰めてやるかという気にもなって…
これが孤高の鯵醤油ラーメン。木桶に入れられて出てきたのはちょっとどうなのサという感じで、底の部分に直角になっているところがあるから洗うのが面倒だろうに。ま、そこはそのくらいにして味はどうか。最初にスープを飲んでみると、なるほどアジからにじみ出た味と香りが強く感じられて、あぁこれは味わったことのある味だな、と言うくらいになじみのものである。これにトンコツとニワトリが加わるとボクの舌はいい加減だから「濃いみそ汁のような味」と表現させてもらうが、趣旨は旨味がいろいろ染み出てますねぇというくらいの意味である。だから、最初の内は確かにおいしい。途中もおいしい。でも…最後は飽きてくるんだよなぁ、ちょっとくどいんだなぁこれが。
店は超満員で少し待たされたが、若い男女6人のオーストラリア人は「オイシイデスネェ~」と店員に日本語で言いながら店を出て行った。
駅に戻りかけると鐘楼があって、小田原に勤務していた友人に誘われてこの鐘が目印の近くの居酒屋に案内されたことがあったのを思い出した。店の名が確か「鐘つき堂」と言ったような気もするが記憶の混戦かもしれない。で、その店を探して気付け薬を、と思ったがなぜか見つからなかったのは、あいまいな記憶のせいである。ラーメンを食べたばかりで、それほど熱心でもなかったのも理由の一つである。
道を挟んだ反対側の老舗の料理旅館の前に人垣ができていて、ガイジンサンたちの姿も。建物は確かに趣はあるけれど…。てなわけで〝初めてのお使い〟も無事終わり、師走の城下町にもそれなりの賑わいがありました。めでたしめでたし。
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