ヒグラシは沈黙したままの朝だったが、思いがけず昼少し前から空が高くなり始め、薄日が漏れるようになった。
活字を追うのにも飽きてきたころで、真新しい愛車を漕いで鬱屈とした気分を晴らしに出かける。
動き出しは東寄りのヒンヤリ感じる風にいささか戸惑ったが、海辺に出るとそれも気にならなくなり、広い空の一部にはうっすらと青空ものぞくようになった。
海沿いの国道134号の交通量は少なめで、後ろから追い抜いていく車の速度に遠慮がないことが気に入らないが、多くは自転車のボクを避けるように中央線に寄って追い越していくので注意を向けていることは分かる。
景色のいい道だから、よそ見でもされたら危なくてしょうがない。
小休止した稲村ケ崎に黄色のカンナが咲いていた。
カンナと言えば夏の花だ。
ローカル線のひなびた駅のホームの端や線路際に植えられていて、たまにやって来る列車を出迎える姿が印象的な花だが、そういうところでは黄色のカンナより朱色の燃え盛る炎を連想させる色合いのカンナが似合う。
そんなことを思いながら眺めていると、黄色のカンナが似合うのは鉄道線路の脇より海辺なのかなぁ…という気がしてきた。
この日は現れていなかったが、真っ青な青空と群青に近い濃い青色の海が広がる空間では濃いオレンジ色よりも黄色の方が色彩的には落ち着く。
白い雲が浮かんだり、水平線に大きな入道雲が現れてもカンナの存在感は十分に立ち向かえそうで、しかも黄色なら違和感はなさそうではないか。
ここにカンナを植栽した人物は、そんなことも考えてオレンジより黄色、他の植物よりもカンナをと思ったのだろうか。
海辺のカンナの堂々した風姿もなかなかのものだ。
晴れて視界が良ければ江ノ島の奥には富士山が天を衝いてそびえているのだが、黄色いカンナはその富士山にも似合うだろう。
月見草だけじゃなかったんだ。
それにしても、何度目の朝令暮改だ ?
それもわずか3~4か月のうちに…
土台無理なんだよ。奴とそのお友達に危機管理は出来ない。
もう十分に長いことやって、甘い汁も味わったろう。
コロナ対策を中心に据える危機管理内閣に任せた方が国のためだ。
もはや総辞職しかあるまい。
稲村ケ崎の黄色いカンナ
港に急ぐ遊漁船の船体の白さが久しぶりのお日様に照らされて目に眩しかった