平方録

初鳴きと極楽トンボ

二十四節気七十二候でいうと、今は立春の内の次候で「黄鶯睍(目ヘンに完)く」(うぐいすなく)候だそうだ。

そういえば十年くらい前まではわが家の東側の道路を隔てたあたりは雑木と灌木、ササが茂る小山があって、小鳥や小動物の格好の住みかになっていた。
そして、ちょうど立春を迎えるあたりから、たどたどしいけれどホーホケキョと初音が聞こえてきたものである。
当時はゴルフなんぞに手を染めてもいたので、早朝に初音に送られて出掛けることも時々あった。
ゴルフ場でそんな話をすると、地方から出てきて“江戸家老”を務めていた連中は「えっ!」と反応し、故郷の山里でも想像するのか「どこに住んでるんだ」と驚いた顔をしたものだったが、それも今は昔。

氷点下を下回る寒い時期があったとはいえ、もうぼちぼち鳴き始めても良いはずなのだが、一向に聞こえてこない。
ウメにウグイスは昔からの定番だが、最近はウメは咲いても春が深まらないと間近で聞くことも出来なくなってしまい、寂しい限りである。
季節感は薄らいでいく一方ではないか。

横浜イングリッシュガーデンの会議に出かけたら、スーパーバイザーの河合伸之がインフルエンザでダウンだという。
手強いつるバラの類のせん定は既に済んでいて、残るは木立性のバラのせん定ばかりなので、河合スーパーバイザーがいなくてもガーデナーたちで十分である。病状を察して「棘だらけのウイルスに感染しちゃったんでしょうネ」とは某嬢の感想。

園内を一回りしてみたが、ひざ丈くらいまで綺麗に切りつめられていて、今年の初夏には通常の視線より下の位置で花を愛でることができそうである。
昨秋は見上げるほどの高さにまで伸びてしまっていたので、ずっと見やすくなるはずである。
園路も何本か増やすことにしていて、池の後ろ側でも工事が進んでいた。
これまでと違った景色が生まれるわけで、お客さんにはより楽しんでもらえるはずである。

会議の後、帰る方向が一緒の後輩と2人で豚の耳と尻尾をつまみながら日本酒をたっぷり飲んで地元の駅まで戻ってきたが、どうにも飲み足りず、ならばと立ち飲み屋ではしごした。
ロミ・シュナイダー似のちかちゃんがいる店だが、夜は麻都香ちゃんが当番だそうで、これが明るい笑顔を振りまく愛想の良い女性。どうしたらあんなに愛想よく振る舞えるのかと不思議なくらいである。
下町の太陽、と言ったら古いかもしれないが、そんな感じで周囲をパッと明るく照らしていた。

右側に立った後輩の隣は50代後半くらいの女性。1人で立ち飲み屋に現れるんである。私の左隣は46歳の独身男性。
結局、店にいる間中、お互い両隣のアカの他人と話し込んでしまい、何も連れ立って入る必要もなかったほどだが、立ち飲み屋はお隣サンとの距離が近い分、酔いも手伝って垣根がなくなってしまうものらしい。

聞けば46歳は岩手県一関の出身だというので、つい最近中尊寺に行ってきたぞというと「あんなところのどこがいいんですか」というから、バカモン!と説教してやった。
ったく、そんな感性だから女性にモテないんである。
新聞は読まないっていうし、じゃぁ世の中の動きはどうやって手に入れてんだ、と聞くとネットだという。

余計なお世話ついでに、ネットじゃあ断片的な結果しか分からないだろう、世の中の流れを知るには、ものごとの過程や背景を押さえておくことが必要だぜ、そのためには新聞が一番だ、と新聞の効能を説明してやった。
そうしたら、どの新聞を読んだらいいのかと聞くので、YとS紙は政権寄りでAとM紙は逆の立場だから好きなのを選べ、政権に批判的な地方紙もあるぞとも教えてやった。

この世代は男女を問わず“お1人さま”が多いようだ。
新聞も読まないくせに、読まないからかもしれないが「自民党しかありませんからねぇ」などと、アベなんちゃらとそのご一統サマが泣いて喜ぶ極楽トンボ振りである。
働き盛りが1人、立ち飲み屋で管を巻いているようじゃあ、日本の将来も怪しいもんである。言っとくけどアベちゃん、こんな輩を何人徴兵したって何の役にも立たないぜ。



せん定作業が終了し、さっぱりとして春を待つ。


新たな園路工事が進む。
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