昨日一昨日とわが鎌倉湘南地方は夏らしい好天に恵まれたのでございます。
何と言いましても視界がようございまして、地中奥深くから掘り出されたばかりの水晶のように、クリアカットに澄み切った青い空が広がっていたのが何よりでございました。
ただ画竜点睛を欠くと申しましょうか、そんな好天にも富士のお山は気が向かなかったのでございましょう、お姿の一端はチラッとお見せいただけましたものの、ほぼ全身を雲の衣でお隠しになられていたのでございます。
それは昨日の朝日が昇る時刻でもそうでございましたし、一昨日の太陽が高く上った後も変わりはございませんでした。
お年頃という訳でもございませんのに、なかなか難しいご性格でいらっしゃるようでございます。
そういう思いを抱きつつ、人気の少ない広々とした浜辺で空の青さと海の青さの中にたたずんで波の音を聞いておりますと、不意に「こっちにおいでよ」という声がするではありませんか。
そう、波が呼んでいるのでございます。
はるか南の海上にさすらっている熱帯性低気圧の影響でございましょう、湘南の海にしては元気の良い波が白い歯を見せながら浜辺に打ち寄せている中から、その声は聞こえてきたのでございます。
青い海と青い空の広がる世界の中に身を置いて、何をちゅうちょする理由がございましょう。
早速、嬉々としてお誘いに乗じたのでございます 。
遠浅の浜を最初はそろりそろりと。
時々波が首のあたりまで這い上がってじゃれついてまいります。その度にこちらの体も思わず揺るがせられたりして、そのチョッピリ悪戯好きで、如何にもフレンドリーな様子に好感を持ったものでございます♪
今年初めての久しぶりの感触でございました。
夏の海はことのほか良いものでございます。
ふと富士山を仰ぎ見ますと富士の上半身がさっきまでより心なしかよく見えるようになっていたのでございます。
波と戯れている様子が良く見えるように、周りの雲を少しお払いになったのでございましょうか。ひょっとして富士山が羨んでいたのでございましょうか?
8月4日の午前10時前の湘南・片瀬西浜から見る富士山は‶深窓の令嬢〟風にお姿をあまりお見せになりません
沖には五輪警備と海水浴客や海のレジャー客の水難予防のための巡視船が3隻も錨泊しておりました
辻堂東海岸まで参りますと人の姿は極端に少なくなるのでございます
こういうところで浜辺に寝転んで静かに波の音に聞き入っていると、真上に広がる真っ青な青い空に吸い込まれて行きそうになるのでございます
富士山の左隣に連なる箱根連山はよく見えておりました
そんな時でございます…「こっちにおいでよ。一緒に遊ぼうよ」という声が聞こえたのは♪
波と戯れ始めますと手加減をしてもらいたいと思うほどの強い力を感じることもあるのでございます
そういう手加減のなさというのも、わが方に対する波の好意の表れと思うのでございます
彼の堀辰雄が「風立ちぬ」で森の中を散策している時に、帽子や肩に毛虫がはっているのに気付いて「これは自然がボクに好意を寄せてくれている証拠」と喜ぶシーンをまねての感想でございます
あぁ~! 思わずよろめく衝撃でございます 何と手荒な歓迎でありますことか ♪
やれやれと思うまもなく悪戯好きの仕掛けは続くのでございます
ふと振り返りますと、同じように波と戯れる人の姿が真夏の海でございます
水も比較的きれいに澄んでおりました
午後、自宅で本など読んでおりますと山の神がテレビで五輪のヨット中継をしていると教えてくれたのでございます
画面の背景に写っているのは見覚えのある葉山の山なみと街並みでございます 写っているヨットは日本艇のようでございます
これも背景は葉山でございます
右端のヨットが470級で金メダルを獲得したオーストラリア艇、順に銀メダルのスウェーデン艇、銅メダルのスペイン艇だそうでございます
身体を艇から投げ出すようにしてバランスをとるためには全身の筋肉を相当効率よく使わないと持続できないハードなものに思えるのでございます
おっと、懐かしい江ノ島の展望灯台がチラッと見えたではありませんか♪
ゴール前のシーンに映った背景はズバリわが鎌倉の七里ヶ浜でございます
この4日のレースでヨット競技は終了したそうで、なんだか最初で最後のテレビ中継だったのではありますまいか
これで江ノ島の通行止めも解除になったようでございます オシマイ