義弟が久しぶりにやって来た話は昨日書いた。
その義弟をもてなすべく、隣町の大きな魚屋で魚を物色した後、隣の八百屋の前を通り過ぎようとするとボクを呼び止める声が聞こえた。
ン?…と立ち止まって振り返ると、小振りではあるが誠に姿かたちの良いキノコがボクに微笑みを投げかけている。
思わず「おぉ♪」と声を出しそうになるが、年金暮らしの元労働者階級のボクとは身分が違い過ぎる。
子どもの頃は気安く親しくしてもらっていたが、所詮は住む世界が違っていたのだろう、長じてからは時たますれ違って会釈を交わす程度で縁が切れたようなものだった。
それが、どういう風の吹き回しだろう、呼び止められるとは…
ボクを呼び止めたのは「マ・ツ・タ・ケ」君。
昔はボクの家にもよく上がりこんで、仲良く遊んだものだった。
彼が遊びに来ると、彼がまとっているとても心地よい香りが家中に充満したりして、幸福な気分にさせられたものだった。
そんなことを思い出しながらマツタケ君と積もる話をしているうちに彼が随分と気楽な態度で接してくれていることに気付く。
今、信じられないような円安で輸入品の値段がビックリするくらい上がる中で、なぜかマツタケ君は一人平然と普段着のまま表に出てきたような感じでとてもフレンドリーなのである。
ぐっと庶民の近くまで下りて来てくれたような印象である。
それでついつい、昔のように「家に遊びにおいでよ」と誘ってみたら、気安く応じてくれたって訳なのだ。
彼とはよく網の上で「こんがり焼き遊び」をしたものだった。そうそう、土瓶の中にもよく入った♪
そして、こんがりと焼いた肌にスダチなど絞って振りかけると得も言われぬ高貴な香りが立ち上って家中に充満し、それはそれは幸福感に包まれたものだった。
時は流れ、彼の生活環境も変わってしまったのだろう。あの得も言われぬ香もあまり立たなかったのは彼も苦労してきたのかもしれない。
何より昔は日本の田舎育ちだったのだが、現在は拠点を海外に移してしまっていたし、彼の場合はアメリカからやって来ていたのだった。
それでも昔通りの歯切れの良い話し方や味わいは変わらなかったのは彼が香りは失っていても誇りは失っていなかった証拠でもある。
鉢植えのキンレンカがまだ咲いている
葉っぱをサラダに加えたり、たまにはホットサンドに挟むこともある
ホームセンターで1袋100円で売っていたタネをぱらぱらと蒔いただけで楽しませてくれている