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平方録

南岸低気圧接近

南関東の冬は来る日も来る日も青い空に、たとえその力が弱々しくとも、明るい太陽が輝く。

北風がびゅうびゅう吹き付ける凍えるような日でも、太陽が出ているといないではその寒さの感じ方もまた大違いで、日のひかりのありがたさが身に染みる時でもある。

「西高東低」の冬型の気圧配置がもたらす特徴なのだが、2月に入って向こう一週間ほどの天気図を眺めていたら、その西高東低の気圧配置が崩れるようである。

明日から月曜日ころにかけて太平洋岸に沿って西からいくつか低気圧が近づいてきて、関東南岸を通って太平洋に抜ける予想になっている。

この低気圧が通過する場合、天気は崩れ、雨が降るのが相場だが、関東の南を通過する際に北の冷たい空気が流れ込むことで、雨が雪に変わることがある。

関東に大雪が降るケースはみなこのパターンで、例えば赤穂浪士の討ち入りがあった元禄15年12月14日寅の上刻は、新暦に直すと1月30日の午前3:00~3:40に当たる。

まさに今の時期である。

おそらくこの時、江戸の南の海上を低気圧が通過していたに違いない。この大雪の中の討ち入りの史実は一方で「江戸時代も今も同じだった」ということを示す、気象学上の貴重な資料の一つでもあるのだ。

これは西高東低が盤石な真冬には決して現れない気象現象で、南岸低気圧が現れることはすなわち、冬型の気圧配置が崩れることを意味し、季節が春に向かって動き出すサインのようなもので、ボクのような生まれた時から南関東で暮らす人間にとって待ちに待ったサインでもある。
かつて、この南岸低気圧は長い間「台湾坊主」と呼ばれてきた。
日本列島の西の台湾方面からやってきて交通をマヒさせたり、農作物に被害を及ぼしたりする"狼藉者"扱いの呼び名として定着していたが、子供達には逆に雪をプレゼントしてくれるサンタクロースのようなイメージもあったのではないか。
まさにボクなどは台湾坊主と聞くと「積雪」のイメージが強く、雪遊びを心待ちにしていた少年時代を引きずってか、"狼藉者"というより、好々爺くらいの親しみを感じたものだ。
この呼称は台湾の人々にはあまり喜ばれず、むしろ蔑視ではないかという懸念もあって「南岸低気圧」という呼び方に代わった経緯がある。
ともあれ、ジジイになると慣れぬ雪かきが面倒で「積もらないでくれ」と願うばかりだが、コタツに入って雪見酒でもしながら庭が薄っすらと白く化粧する姿を眺めるのも悪くはないな…とも思う。
さてどうなりますか…
 
 

近所の運動公園のカワヅザクラ



 
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