平方録

秋の出羽路を行く 番外編

月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。

時は永遠の旅人である。すなわち、月も日もそして年も、始まりと終わりを繰り返しながら、歩み続けて止むことはない。
この、よく知られた一文で始まる「おくのほそ道」を残した芭蕉は自身の人生をも「旅」になぞらえた。
この旅で詠まれた句は言わずもがなだが、紀行文の文章もまた実に味わい深いものがある。

ボクはたまたま山形に親しい友人を持っていて、その友人の招きによってしばしば彼の地を訪れ、芭蕉の足跡の一端に触れる幸運を得てきた。
山寺しかり、最上川の川下りしかり、酒田の町しかり。
そしてまたこの度、出羽三山のうち月山こそ残してしまったが、羽黒山と湯殿山に登って来れたのは実に収穫であった。
わけても湯殿山で詠まれた「語られぬ湯殿にぬらす袂かな」の句の背景の何たるかが分かったような気がするのはこの旅のハイライトだったと言ってもよい。

月山に登って湯殿に下る際の「おくのほそ道」の記述の抜粋。
「岩に腰かけてしばしやすらふほど、三尺ばかりなる桜のつぼみ半ばひらけるあり。ふり積雪の下に埋て、春を忘れぬ遅ざくらの花の心わりなし。炎天の梅花ここにかほるがごとし。行尊僧正の歌の哀れもここに思ひ出て、猶まさりて覚ゆ。惣て、此山中の微細、行者の法式として他言することを禁ず。よって筆をとどめて記さず。坊に帰れば、阿闍梨のもとめによりて、三山順礼の句々短冊に書。」

芭蕉翁も掟に従って沈黙しているのだ。
本宮の参拝を終えて徒歩で山を下る間に足元に咲いていた花々の写真をかざして湯殿山の香りとしたい。






黒い鎧をまとったような小さな虫がたかっている


これはセンニンソウ? それともタイモンジソウ?


日本海側の一部にしか見られないオニシオガマ?





ゲンノショウコ? に羽の生えた虫が…


この花弁の先がほの赤く染まった白い可憐な花にも羽の生えた虫がたかって蜜を吸っている。もう間もなくすると花も消え、分厚い雪に覆われてゆく


ここからは羽黒山のスギの巨木が連なる中に続いている2446段の階段を息も絶え絶えに上ってゆく途中で見かけた花


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