バラは肥料の大食いで、メーンディッシュともいうべき「寒肥」に加えて、咲き終われば「お礼肥」をするし、2番花や3番花が咲き終わる度にも少量の「追肥」を与え続けると、秋にもきれいな花を咲かせてくれるものなのだ。
だから寒肥やりは今年1年の期待を込めた作業であって、少々の北風にさらされて身体が縮こまったとしても、心の弾む楽しい作業なのである。
根元に穴を掘ったりして肥料をくべるのだから、どうしたって顔が株に触れるくらいに近づくのである。
トゲがなければ頬ずりしたくなるほどだが、傷だらけになってしまうので頬ずりこそしないが、株と一緒に呼吸を合わせる気分なのだ。
呼吸を合わせるから、バラの方もこちらがどんな気持ちでいるのか分かるらしい。ときどき、分かったというサインをトゲに託して送ってくるお茶目な奴もいて、それでできる傷さえ愛おしいものなのである。
鎌倉を驚かしたる余寒あり 高浜虚子
寒肥作業が終わりに近づくころになると日中はずいぶんと暖かく感じられる日もあって、春への期待が膨らむものである。
そんな気の緩みを突くかのように、突如として真冬の寒さに引き戻されることがあって、これはもうぶるぶる震えるしかないのだが、日本語には「余寒」などとしゃれた言葉も用意されているのだ。
要するに余りもののような寒さのことを言うのだが、これが日ごとに春めく空気を喜ぶ心根にはとんでもない意地悪に思えて、なんとも憎たらしいものだが、そう思いつつも「冬将軍め、最後のあがきだな」と思えるような心の余裕というものも心の片隅にあって、それほどじたばたはしないで済むものでもあるのだ。
そういう意味では、虚子も決してじたばたすることなく、どこか急激な冬景色の出現を楽しんでいる風情である。
アメリカの第45代大統領の側近の一人、安全保障担当の補佐官が突然辞任したというニュースが流れた。まだ政権が発足したばかりで、これからって時に…。
北朝鮮の金正日の長男の金正男が暗殺されたらしいというニュースも流れている。一方は天下の体制に少なからぬ影響を与えるんだろうけど、もう一方は腹違いの弟の指図なんだろうと思うと、いよいよ〝王朝〟も末期的症状だなって…。でも〝王朝〟が崩壊すれば天下の体制は激変するからなぁ。
こういうのも春を目前にした「余寒」の一種なんでしょうかねぇ。
逆光の竹藪=円覚寺如意庵
最新の画像もっと見る
最近の「随筆」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事