僕の二十代の自慰素材は、AVに代表される映像媒体ではなく、写真集や雑誌のグラビアがその中心を占めていた。週刊誌や漫画誌で自身の性欲が高まりそうな素材を見つけ、それらの写真集が上梓されるのを期待した。金曜日の夜になると、僕は郊外のセルビデオ店をはしごして新刊を探し、それを買うとすぐに自室に戻って一回目の自慰に励んだ。オナペットとして何カ月も所有し続けるのもあれば、買った日の翌日に古書店に買い取ってもらうのもあった。十回を超せばましなほうで、二、三回で打ち止めというのも少なくなかった。
僕がお世話なった写真集の主な版元として、彩文館出版、ぶんか社、アクアハウス、バウハウス、竹書房が挙げられる。大手出版社がメジャーアイドルにしか目を向けないのとは対照的に、それらの版元はまだマイナーの域に留まっているタレントの写真集を積極的に上梓し、特に彩文館出版は僕のオナペットを数多く供給してくれた。先に触れた小倉優子の「恋しくて優しくて」、磯山さやかの「SOFT」もそうで、同社の目録と僕の記憶によると、これまで約四十作品を買ったことになる。
二〇〇三年に最多自慰回数を記録した、前園りさの「楽園~秘密の花園~」、佐藤寛子の「水蜜桃」の二作品は、ともにぶんか社から上梓された。竹書房は彩文館出版やぶんか社で一作目か二作目を発表したタレントに目をつけるようで、佐藤もその流れに乗って同社から学習研究社、小学館、新潮社へと大手出版社にも相手にされるようになり、メジャーへの階段を上がっていったが、僕はそのときすでに佐藤に対する性的興味は失せていた。
小倉や磯山、佐藤のようなメジャーに成り上がったグラビアアイドルよりも、写真集を一作品発表しただけで目立った芸能活動もなく消えていったオナペットを、今でも懐かしく思う。〇三年に前園に次いで自慰回数を稼いだ三枝史歩はその一人で、「Pretty Milk」という作品を発表しただけの知る人ぞ知るロリ巨乳系のマイナーアイドルだったが、十六歳とは思えぬ成熟した肢体と胸の谷間の美しさに、僕はすっかり虜になってしまった。イメージDVDも同時発売したが、当時は手淫ではない自慰方法を確立していたので、写真集でひたすら我慢した。
三枝の芸能活動が確認できるのはこの写真集だけで、インターネットで調べてみても写真集以外の情報はない。たまにオークションサイトで写真集が出品されることもあるが、ヒット出版社というマイナーな版元ゆえに初版部数も少ないだろうし、いかんせん知名度が低いから市中に出回るのもまれだ。先日、神保町の荒魂書店を訪ねる機会があったが、三枝の写真集は見つからなかった。
まるで「お菓子系」のような活動期間の短さだが、二十代の僕がそれに夢中だったように、三枝はメジャーになったグラビアアイドルよりも、ずっと記録と記憶に残るオナペットだ。十八歳以下のモデルによる水着姿の写真集が粗製乱造されたおおらかな時代の中で、性欲旺盛の僕はロリ巨乳系と美少女系の写真集を使い分けながら、而立を迎えることになる。
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